ひたすら土集め…大村さん常に持ち歩いている物とは[2015/10/06 16:02]

 味噌や醤油、納豆といった私たちの生活に身近な発酵食品にも微生物の役割は欠かせません。こうした微生物を活用する研究は、日本のお家芸といわれています。1gの土には1億もの微生物がいて、ごくまれに薬を作り出す菌がいるといわれています。そうした菌を研究するために北里大学・大村智特別栄誉教授(80)が常に持ち歩いているというのが、小さなポリ袋とスプーンです。通勤の時だけでなく、出張で各地を訪れた際にも、ひたすら土を集めたということです。様々な土にいる微生物の研究を続けるなかで、大村さんは、1974年に静岡県伊東市のゴルフ場近くで採った土から放射状に菌糸を出す放線菌の一種を発見。その後、ノーベル賞を共同受賞するウィリアム・キャンベルさん(85)らの研究で、この菌が作る物質が寄生虫を退治する効果が高いことが分かり、寄生虫薬「イベルメクチン」の開発につながりました。当初は家畜用として使われていましたが、その後、熱帯で流行している失明の恐れがある病気「オンコセルカ症」に効果があることが分かり、今ではアフリカなどで年間3億人が使用しています。大村さんは会見で「日本には微生物を世の中のために使う伝統があり、そういう環境に生まれて良かった。先輩たちが築いてくれた学問分野だ」と喜びを語っていました。

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