「天皇としての旅終えようと…」 陛下の会見全文2[2018/12/23 00:33]

 天皇陛下は23日に85歳の誕生日を迎えるにあたって記者会見を行い、現在のお気持ちを述べられました。

 天皇陛下:
 次に心に残るのは災害のことです。平成3年の雲仙・普賢岳の噴火、平成5年の北海道南西沖地震と奥尻島の津波被害にはじまり、平成7年の阪神・淡路大震災、平成23年の東日本大震災など数多くの災害が起こり、多くの人命が失われ、数知れぬ人々が被害を受けたことに言葉に尽くせぬ悲しみを覚えます。ただ、そのなかで人々の間にボランティア活動をはじめ、様々な助け合いの気持ちが育まれ、防災に対する意識と対応が高まってきたことには勇気付けられます。また、災害が発生した時に規律正しく対応する人々の姿にはいつも心を打たれています。
 障害者をはじめ、困難を抱えている人に心を寄せていくことも私どもの大切な務めと思い、過ごしてきました。障害者のスポーツはヨーロッパでリハビリテーションのために始まったものでしたが、それを越えて障害者自身がスポーツを楽しみ、さらに、それを見る人も楽しむスポーツとなることを私どもは願ってきました。パラリンピックをはじめ、国内で毎年、行われる全国障害者スポーツ大会を皆が楽しんでいることを感慨深く思います。
 今年、我が国から海外への移住が始まって150年を迎えました。この間、多くの日本人は赴いた地の人々の助けを受けながら努力を重ね、その社会の一員として活躍するようになりました。こうした日系の人たちの努力を思いながら、各国を訪れた際にはできる限り会う機会を持ってきました。そして近年、多くの外国人が我が国で働くようになりました。私どもがフィリピンやベトナムを訪問した際も将来、日本で職業に就くことを目指してその準備に励んでいる人たちと会いました。日系の人たちが各国で助けを受けながら、それぞれの社会の一員として活躍していることに思いを致しつつ、各国から我が国に来て仕事をする人々を社会の一員として私ども皆が温かく迎えることができるよう願っています。また、外国からの訪問者も年々、増えています。この訪問者が我が国を自らの目で見て理解を深め、各国との親善友好関係が進むことを願っています。
 明年4月に結婚60年を迎えます。結婚以来、皇后は常に私と歩みをともにし、私の考えを理解し、私の立場と務めを支えてきてくれました。また、昭和天皇をはじめ、私とつながる人々を大切にし、愛情深く3人の子どもを育てました。振り返れば、私は成年皇族として人生の旅を歩み始めてほどなく現在の皇后と出会い、深い信頼のもと、同伴を求め、爾来(じらい)この伴侶とともにこれまでの旅を続けてきました。天皇としての旅を終えようとしている今、私はこれまで象徴としての私の立場を受け入れ、私を支え続けてくれた多くの国民に衷心より感謝するとともに、自らも国民の一人であった皇后が私の人生の旅に加わり、60年という長い年月、皇室と国民の双方への献身を真心を持って果たしてきたことを心からねぎらいたく思います。
 そして、来年春に私は譲位し、新しい時代が始まります。多くの関係者がこのための準備にあたってくれていることに感謝しています。新しい時代において、天皇となる皇太子とそれを支える秋篠宮はともに多くの経験を積み重ねてきており、皇室の伝統を引き継ぎながら日々、変わりゆく社会に応じつつ、道を歩んでいくことと思います。
 今年もあとわずかとなりました。国民の皆が良い年となるよう願っています。

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