皇太子さま59歳の誕生日 東宮御所で会見3[2019/02/23 01:00]

 皇太子さまは23日に59歳の誕生日を迎え、即位を控えた現在の心境などを語られました。

 質問:
 秋篠宮さまは昨年のお誕生日の記者会見で、新天皇が一代一度限り臨む大嘗祭(だいじょうさい)の在り方について持論を述べられました。即位に関わる一連の皇室行事について、殿下はどうあるべきだとお考えでしょうか。
 
 皇太子さま:
 即位に関わる一連の皇室行事の在り方については、平成のお代替わりの折の前例を踏まえ、政府において十分な検討を行ったうえで決定したものと理解をしております。また、様々な事項の決定については私も折々に説明を受けてきております。従いまして今回、政府が決定をした内容について、私がこの場で何か述べることは控えたいと思います。

 質問:
 残り2カ月余りで「平成」が幕を閉じます。「平成」とはどのような時代だったとお考えでしょうか。

 皇太子さま:
 平成の始まりという時に、私は同じ年に起こったベルリンの壁の崩壊を思い起こします。私は、その2年前の昭和62年にベルリン日独センターの開所式に出席するため、当時の西ドイツのベルリンに行きました。その時見た、冷たくそびえるベルリンの壁は人々を物理的にも心理的にも隔てる東西の冷戦の象徴として記憶に深く刻み込まれるものでした。その後、平成元年11月にベルリンの壁が崩壊し、東西のベルリン市民が壁を登っている姿に新たな時代の到来を感じました。平成という時代はまさに、この新しい世界の動きとともに始まったと言えると思います。
 冷戦の終結を受けて、二極の対立構造はなくなったものの、各地で内戦や地域紛争が増加しました。これに対して日本は開発援助のほか、復興支援や人道支援も積極的に行うことにより、世界の人々から高く評価されるようになりました。また、ノーベル賞の受賞やスポーツ、文化といった分野でも日本人が国際的に評価され、あるいは活躍する場面が増えましたが、これは平成時代の特徴ではないかと思います。オリンピックを例に挙げるまでもなく、平成を通じて特に十代の中高生をはじめとした若い人たちの活躍が目立ったように感じ、とてもうれしく思います。
 陛下がおっしゃっているように、平成が戦争のない時代として終わろうとしているわけですが、戦後、長く続いてきた平和な日本の社会において、この国の未来を担う若い人たちが夢を大切にしながら自分の能力を発揮できる環境が整ってきたことの証しであると思います。私も、これまで色々な場で若い方々とご一緒する機会を大切にし、その熱意や息吹を感じて心強く思って参りましたが、これからも若い世代の活躍を願いつつ、見守っていきたいと思っております。
 また、平成は人々の生活様式や価値観が多様化した時代とも言えると思います。それはIT、その他の科学技術の飛躍的発展によって、さらに推し進められた部分もあると思います。今後は、この多様性を各々が寛容の精神をもって受け入れ、お互いを高め合い、さらに発展させていくことが大切になっていくものと思います。他方で、少子化や高齢化の進行は日本のみならず、多くの国で大きな社会問題となっています。今後の日本にとり、諸外国の経験や知識を参考にしながら、この問題について考えていくことが必要な時代になっていると思います。
 平成は、また、地震や津波、台風や集中豪雨といった数多くの自然災害に見舞われた時代でもありました。多くの人が命を落とされ、また、生活の基盤を失われたことは大変、心の痛むことでした。そうしたなかで、災害救助や復旧・復興の折に示された「絆」とも称される助け合いの精神には、日本の人々の優しさや秘めた強さを見る思いが致しました。そうした不幸な出来事が発生する度に両陛下には被災地に向かわれ、困難な状況にある人々に寄り添ってこられるなどお力を尽くしてこられました。両陛下が国民とともにありたいと常に願われ、そのお気持ちを体現してこられたことが、私の心に深く残るものと思います。

 質問:
 殿下は、30年以上にわたって国民文化祭に出席されてこられましたが、来年度以降は象徴天皇として国民文化祭に臨まれることとなると思うのですが、臨むにあたっての抱負や思いなどをお聞かせ頂けますでしょうか。

 皇太子さま:
 立場が変わることによって、今まで両陛下がなさってこられた色々なお仕事を私が受け継がせて頂くことになります。そして、両陛下が今までなさってこられたことをよく学び、それぞれの行事に心して出席したいと思っております。それから今、お話のありました国民文化祭については私が第1回から出ている行事ですし、特にその地方、地方で色々な文化があるなかで自分たちの文化を再発見し、そして、また新しい文化を創り上げていくという理念のもとに創られた行事であると理解しております。近年は障害者芸術・文化祭も一緒に行われることになりましたので、より内容の深いもの、濃いものになってきていると思います。いずれにしましても、一つひとつの行事に新しい天皇としての立場で心して出席していこうと思っております。

 質問:
 来年はオリンピック・パラリンピックが開催されます。殿下は去年、パラリンピックのマラソン選手・道下さんの伴走をなさいました。その時の率直なご感想と何か新たな発見がございましたらお聞かせ下さい。

 皇太子さま:
 オリンピック・パラリンピックについては特に両陛下が皇太子時代から大変、心を寄せてこられたものだと思います。そして、両陛下が日本の障害者スポーツ大会へ大きな貢献をされたものと私も思っておりますし、障害者スポーツ大会について、両陛下から今までも色々なことを伺ってきております。来年にはオリンピック・パラリンピックを控えております。そのようななかで、園遊会で道下さんとお会いしまして、私がジョギングを趣味としていること、よくこの御用地の中を走っており、園遊会の会場となっている場所もよく走っているというお話をしましたところ、ご一緒する機会があればと先方がおっしゃって下さいました。私としましても、そういうパラリンピックの選手の人たちがどのように競技に臨んでいるのか、パラリンピックとはどういうものなのか、ということを私自身も理解する良い機会だと思いましたので、その申し出を喜んでお受けすることと致しました。
 私が心配したのは、どのように目の見えない方を走りながらリードしたらいいのか、しかもひも1本で結ばれている状態ですので、どのように声を掛けてリードしていったらいいかということで、事前に書物を読んだり、あるいは動画を見たりして少し研究を致しました。実際にご一緒してみて、私自身も最初は少し緊張しましたけれども楽しく、とても良い経験をさせて頂いたように思います。
 一例を挙げますと、例えば2メートルくらい先にマンホールがありますということを道下さんにお話しようと思いましたら、気が付いた時にはもうマンホールの上にいるような感じで、走っていると随分スピードもあるんだなと思いましたし、実際に伴走の方がどのように選手をリードされているのかということも私も分かって、自分としても大変、良い経験になったと思います。もう一言付け加えさせて頂きますと、三重県で障害者の施設に行きました時にボッチャをやっている場面を見せて頂きました。その時に、そこにおられた選手の方が私にボールを渡して、やってみませんかと言って下さったので、実際に投げてみると、やはり意外に難しいものだと思いました。
 このように、自然な形でパラリンピックの競技を自分自身が体験できたということは本当に自分にとっても良かったと思っております。そして、来年のオリンピック・パラリンピックを大変、楽しみにしております。

 質問:
 先ほど雅子さまについてはご体調のところは伺ったんですけれども、今後のご活動のご活躍を期待される分野といいますか、内容といいますか、どうお考えなのか、例えば国際的なものなのか、それとも若い人たちの活躍の環境を整えられることですとか、また、困難な状況に置かれている人たちに寄り添うことですとか、どういった内容でご公務、ご活動をされていってほしいとお考えでしょうか。
 
 皇太子さま:
 今は体調の快復に一生懸命、取り組んでおりますし、将来的には自分としてできることが見つかることを私も心から願っておりますが、現在は、そういうものを少しずつ模索しているような段階なのではないかと思います。雅子自身も色々、海外での経験もありますし、このグローバル化の時代にあって、国際的な取り組みなど本人だからできるような取り組みというのが今後、出てくると思います。今、具体的にどういうものかということはお答えできないのですけれども、先ほども申し上げました通り、本人も一生懸命、努力をしながら快復に努めておりますので、何か良い取り組みに将来、出会うことができれば私も大変うれしく思います。

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