被災地“移住女子”の挑戦「漁師のために銭湯を」1[2019/03/11 12:42]

 被災地に移住した女の子たち。5人だった彼女たちはこの春から11人に増え、新たな挑戦としてある施設を建てることになりました。

 2019年3月宮城県気仙沼市唐桑町。1人の女の子が移住するためやってきました。関西から移住してくる女の子を迎え入れているのが根岸えまさん(27)。彼女は4年前に東京から移住、半島へ移住してきた女の子たちという意味の「ペンターン女子」として活動してきました。最初は5人だったペンターン女子もこの春から11人に増えます。
 えまさんは後継者不足が問題の漁師さんのため、地元の学生に漁体験をしてもらい、その魅力を伝えています。他にも取材とあらばなんでも受け、唐桑の魅力をアピール。また、移住したいという人がいれば、町の人に紹介。早くなじめるように仲間にも紹介しています。関西から来た岡田紗英さん、少し緊張気味、すると…。移住の先輩、ペンターン女子たちがあっという間に岡田さんの緊張を解きほぐしていました。
 そして、えまさんは岡田さんが住むシェアハウスも探していました。一軒家、移住者のため下見の準備もぬかりありません。海が見える一軒家。2階には3部屋の個室があり、シェアハウスにはもってこい。
 8年前、唐桑の町も津波に襲われて102人もの命が犠牲となりました。移住者は町の人にとってはありがたい存在です。この春、えまさんは新たなことに挑戦。気仙沼魚市場のすぐそばにある更地、ここで何をやるのかというと…。
 4年前に唐桑町に移住・根岸えまさん:「銭湯と食堂を建てる場所。気仙沼は県外から船が来て水揚げする。港の近くにお風呂とか朝ごはん食べられる場所がない。ここに作ろうと思って」
 今年5月下旬、銭湯と食堂をオープンさせるのです。商業施設も併設される予定です。気仙沼には港近くにかつて131年も続いた銭湯がありました。しかし、2年前にやむなく廃業。えまさんは漁師さんのために銭湯を復活させたいと考えたのです。地元の漁師さんは銭湯について。
 漁師・佐々木夫一さん:「港には銭湯は銭湯はあって当たり前。ないのがおかしい。漁師の仕事は不眠不休の時がある。そういう時は風呂さ入って体を休める。なくてはならないもの」
 命を懸けて漁に出る漁師さんの船出。町の人たちは皆で無事を祈り、送り出します。この船は出航すると1年間は戻ってきません。漁師は出航前に大きなお風呂に入るのです。そして、陸に戻ってきた時はお風呂で疲れを癒すのです。気仙沼では出航の時にテープを船にくくり、家族との別れを惜しみます。帰ってきた漁師さんに新しい銭湯で疲れを癒してほしい。えまさんは船を見送りました。
 今月上旬、えまさんは気仙沼を離れて福島県にいました。銭湯の下見のためです。銭湯はトレーラーハウスという移動も可能な施設にすることに決めました。8人分の洗い場に、くつろげる湯船。しかし、銭湯開業には乗り越えなければならない大きな壁がありました。一緒に開業するのは被災者でもある2人。代々、水産加工業を営む女将の斉藤さんと地元で有名なカフェを2店舗経営する小野寺さん。津波を乗り越え、ビジネスを展開してきた強者です。銭湯の開業には資金が3000万円必要。1000万円は市から助成金を受け、1400万円は気仙沼の企業から集める予定。残りの600万円はネットを使ったクラウドファンディングで集めることにしました。サイトの担当者からレクチャーを受けます。
 クラウドファンディング、サイト担当者:「3月7日までに120万円が目標。最初の3日間目指していく感じになる」
 えまさんは資金集めにプレッシャーを感じていました。
 クラウドファンディング、サイト担当者:「皆さん普段何を使っている?」「(サイトを)オープンしたから『いいね』と言って支援してくれるわけではない。最初はご自身のご友人とか知り合いの方、直接、支援してもらう必要があって、まずは知り合いの方にしっかり支援してもらう。フェイスブックは『いいね』にリクエストができる。見てねというのを友達に言えるので。アカウント作ったら『いいね』集めるのは全員で力ずくでやって下さい。フェイスブックある程度『いいね』増えてきたら、ツイッターもやっているよって流して。相互フォローを行いながらだんだん見ている人の人数を増やしていく。投稿するのは大変だと思うので、どこかのタイミングでまとめてツイート作って予約投稿とかやってみて下さい」
 果たして600万円を集められるのか…。漁師さんもえまさんにエールを送ります。
 漁師・佐々木夫一さん「すごいことだよ。えまが今やろうとしていることは、皆が思っているけれどもやんない。やれない。やんない。それをあえてやろうとするのだから絶対に成功する」
 移住して4年。被災地を助けるために移住したえまさんは町の人に愛され、助けられています。愛されているのはえまさんだけではありません。福井県から移住した加藤航也さん(29)と岐阜県から移住した矢野明日香(30)さん。なんと、移住者同士で結婚することになりました。

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