児童虐待防止法改正案が成立 専門家に聞く[2019/06/21 22:50]

 19日、親による体罰の禁止を明記した児童虐待防止法などの改正案が国会で成立しました。虐待事件が後を絶たないなか、新しい法案は虐待を防ぐことにつながるのか、専門家に話を聞きました。

 ―評価するが実行には時間が必要
 改正法では、保護者や施設の職員らが「しつけ」として体罰をすることを禁止しています。人手不足などが課題となっている児童相談所については、子どもの一時保護などを行う職員と保護者を支援する職員を分けることや、児童福祉司の配置基準の規定が設けられました。
 関西大学・山縣文治教授:「非常に増えている虐待相談に対応する児童相談所の質、量ともに上げていこうという趣旨なので、評価していいのではないかと思う。しかし、一気に非常に急激な人員増加になるので、場合によっては瞬間的な質が下がる可能性がある。新しい未経験の方々がたくさん来られることによる瞬間的な指導力の低下が懸念される。人間が関わる仕事だから、その人たちが制度を十分理解してそれを実際に実行できるまでには時間が必要だ。少し時間をかけて評価をして、確実な浸透を図る期間を設けてほしいなと思う」

 ―そもそも既存の仕組みが機能していない
 法改正の背景には、幼い命が犠牲になった東京・目黒区や千葉県野田市の事件があります。改正案には、虐待を受けた子どもが転居した際に児童相談所の引き継ぎを徹底することや、学校の教員などが児童の秘密を漏らしてはならないということなども盛り込まれています。
 関西大学・山縣文治教授:「目黒の事件に関しても、野田の事件に関しても、お子さん自身が自分で表現できる。『助けて』とか『虐待を受けてます』ということを言える、その環境であったにもかかわらず、虐待で死亡したというのは、今の既存の仕組みが機能していなかったと言えるので、法改正によらずとも本来は減らさないといけない。法改正によって、さらにそこを応援できているというふうに思う」

 ―保護者のケアが不十分だった
 また、改正法にはこれまではきちんと示されていなかった点も追加されました。虐待をした保護者について、再発を防止するために児童相談所が医学的・心理的に指導するよう努めることを定めています。
 関西大学・山縣文治教授:「(これまでは)全体業務のなかの一つであって、保護者のケアを丁寧にやるという時間的余裕もあまりなかった。一人ひとりの親御さんに合った指導体制を組むことをやっぱりできていなかったんじゃないのかなと思う」

 ―“しつけ”と“体罰”の議論はこれから
 一方で、課題も残されています。民法が規定している親権者の子どもへの「懲戒権」の在り方については、改正法施行後2年をめどに検討することとしています。また、子どもの意見が尊重されるような仕組みなど、子どもの権利を擁護するための仕組みについても、施行後2年をめどに検討することにしています。
 関西大学・山縣文治教授:「子どもの人権を守った子育てをする社会づくり、家の中、地域、社会、全体にいろんな次元で子どもの人権を尊重した子育てをするというところ、その典型的なのが体罰とか虐待だと思っていますので、そういう意識を皆で共有して頂きたいと、そういうきっかけになるのではないか」
 改正法は一部を除き、来年4月に施行されます。

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