皇后さま56歳誕生日に際してのご感想 全文[2019/12/09 00:00]

 皇后さまが9日に56歳の誕生日を迎え、一年の感想を文書につづられました。文書は以下の通りです。

 今年は30年以上にわたる平成の御代の終わりに上皇陛下がご退位になり、5月初めに天皇陛下がご即位になって新しく令和の御代になりました。誕生日を迎えますのにあたり、時代の節目となった今年を振り返りますと、深い感慨に包まれます。年の初めから上皇陛下のご即位30年、上皇上皇后両陛下ご結婚60年をお祝いする様々な行事や退位礼正殿の儀をはじめ、上皇陛下のご退位に関わる様々な行事がございましたが、平成最後のお務めの一つひとつを、それまでとお変わりなく、お心を込めて大切にお務めになるお姿が深く心に残っております。
 5月1日の天皇陛下のご即位以降、ご即位に伴う一連の行事を陛下がご無事にお済ませになり、私も陛下のお力添えを頂きながら、一つひとつの行事に無事にご一緒させて頂くことができましたことに安堵(あんど)し、うれしく思っております。上皇上皇后両陛下にはご在位中から陛下のご即位関連行事をはじめ、お代替わりが円滑に進むようにとのお心遣いとお導きを賜りましたことに深く感謝申し上げます。
 また、様々な行事の準備にご尽力頂いた方々に厚く御礼を申し上げます。天皇陛下のご即位以来、5月の皇居での一般参賀や11月の国民祭典、祝賀御列の儀などの折に多くの国民の皆様から思いがけないほど本当に温かいお祝いを頂きましたことに心から感謝しております。
 また、この7カ月の間に地方への訪問、都内での行事などを通して国民の皆様と接するなかで、多くの方々から温かいお気持ちを寄せて頂いたことをうれしく、また、ありがたく思いながら過ごして参りました。日本国内各地で出会ったたくさんの笑顔は私にとりましてかけがえのない思い出として心に残り、これからの歩みを進めていくうえで、大きな支えになってくれるものと思います。同時に、このような国民の皆様の温かいお気持ちは平成の御代の間、上皇上皇后両陛下が国民と苦楽をともにされながら長きにわたって国民に寄り添われ、ご立派にお務めを果たされたことによるところが大きいものと深く感謝しております。
 そして、これからの日々、陛下とご一緒に国民の皆様の幸せを常に願いながら、寄り添っていくことができましたらという思いを新たにして参りました。そのようななかにあって、10月の台風19号など今年はいくつもの災害が重なり、日本国内の広い範囲が大きな被害に見舞われたことは大変、残念なことでした。犠牲になられた方も多く、深く心が痛みます。ご遺族のお悲しみはいかばかりかと思いを寄せ、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。また、被災された方も大勢おられ、寒さが募るなか、様々なご苦労が絶えないことと案じております。今後、復旧が順調に進み、被災された方々に安心できる生活が一日も早く戻ることを心から願っております。
 近年、日本のみならず、世界各地でも水害や山火事などの自然災害が多く発生しており、地球温暖化や気候変動などの問題が現実のこととなりつつあることが案じられます。また、日本では気候関連の災害の他にも南海トラフ地震や首都直下地震などの大地震も予測されており、様々な面から防災対策を進めていくことがますます大切になってきているように思われます。プラスチックごみなど多くの環境問題や日本国内の貧困や子どもの虐待などの問題、また、世界で紛争や内戦が続いていることなどにも心が痛みます。このことに関連して、アフガニスタンで長年にわたり、医療活動や灌漑(かんがい)施設の整備などを行い、復興の支援をされてきた中村哲氏が最近、現地で命を落とされたこともとても残念なことでした。人々が安心して暮らせる平和な世界が実現することを願ってやみません。
 一方、今年を振り返りますと、様々な明るい出来事もありました。特に最近では、日本で初めて開催されたラグビーワールドカップ2019日本大会で「ワンチーム」として活躍した日本選手をはじめ、各国選手による世界トップレベルの試合に日本中が沸き、試合が開催された各地で各国選手団と地元の方々との心温まる交流が広がるなど、とても良い大会になったことをうれしく思いました。
 また、東日本大震災で被災した釜石市でこの大会の試合が行われたことも喜ばしいことでしたが、その釜石市が残念ながら台風19号の被害を受けた時には、試合が中止になったカナダの選手団が泥の除去作業などのボランティア活動をされ、ナミビアの選手団は合宿地の宮古市で交流会を開き、被災者らを励まされたことも心に残る出来事でした。
 学術の分野では吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞されました。日本の研究者の方々の研究の成果が広く世界に認められ、ノーベル賞受賞が近年続いていることを喜ばしく思っております。来年はいよいよオリンピック・パラリンピック競技大会が東京で開催されますが、ラグビーワールドカップ2019日本大会のように、スポーツの素晴らしさを目の当たりにすることができるのみならず、多様な背景を持つ世界の人々がお互いを尊重し合い、友好を深める良い機会になるとともに、東日本大震災の被災地にとっても大きな力になるような大会になることを願いたいと思います。
 愛子は早いもので今年、高校3年生になり先日、18歳の誕生日を迎えました。残り少ない高校生活のなかで、勉強のみならず、運動会や文化祭などの学校行事にもお友達と一緒に楽しく取り組んでいます。これから高校を卒業しますと、今まで以上に様々な経験を積み重ねながら視野を広げていく時期になると思いますが、これからも感謝と思いやりの気持ちを大切にしながら、色々な方からたくさんのことを学び、心豊かに過ごしていってほしいと願っています。
 天皇陛下にはご即位されて以来、皇居宮殿での儀式などにとてもお忙しい毎日をお過ごしでいらっしゃいます。顧みますと、上皇陛下には80代半ばを迎えられていた今年4月まで、このように重いご公務を毎年、欠かさずお務めになっていらっしゃいましたことに深い敬意の念を新たに致します。
 また、上皇后陛下には平成の御代の間、皇后としてのお務めを果たされながら、上皇陛下を常におそばでお助けになり、上皇陛下のお力になってこられました。上皇后陛下には今年、ご手術をお受けになり、ご案じ申し上げましたが、上皇上皇后両陛下には、これからもくれぐれもお体を大切になさり、永くお元気にお過ごしになりますよう心よりお祈り申し上げます。
 そして、ご譲位後も私たちの歩みを温かくお見守り頂いてきましたことに深く感謝申し上げます。天皇陛下にはお忙しいなかでもいつも私の体調をお気遣い下さいますことに心より感謝申し上げます。私も天皇陛下のお務めの重さを常に心にとどめ、陛下をおそばでお助けできますように健康の一層の快復に努めながら、皇后としての務めを果たし、陛下とご一緒に国民の幸せに力を尽くしていくことができますよう努力して参りたいと思っております。この機会に、特に今年、国民の皆様からお寄せ頂いた格別の温かい祝福のお気持ちに重ねまして、厚く御礼申し上げます。

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