監督が作品に込めた思いは…原発事故描いた映画公開[2020/03/06 08:44]

 東日本大震災からまもなく9年。想像を超える被害が出た福島第一原発の事故について描いた映画が6日に公開になります。AbemaMorningでは作品を手掛けた若松節朗監督(70)に撮影の舞台裏や映画への思いを伺いました。

 渡辺謙さん(60):「こんな男たちがもしかしたら世界を救ったのかもしれない。そういう思いでこの映画を届けることができたら、この『Fukushima50(フクシマフィフティ)』という意味が本当になっていくのではないかなと思っています」
 佐藤浩市さん(59):「災害というのはいつも深い傷痕、爪痕を残す。負の遺産を我々、人間のほんの少しの努力で遺産として『明日へ』『未来へのバトン』として渡すことができると思います」
 佐藤さんや渡辺さんら日本を代表する実力派俳優が集結した映画「Fukushima50」。原作は原発事故の関係者90人以上に取材したノンフィクション作品。2011年3月11日に発生した東日本大震災によって起きた福島第一原発事故で原子炉の暴走を止めるために奮闘し、当時、海外メディアから“フクシマフィフティ”と呼ばれた50人の作業員らの姿が描かれています。
 若松節朗監督:「福島は9年経ちました。福島に行ってみると何も解決していない。復興できていない。これを世界に発信したいんですよ」
 作品を手掛けたのは「沈まぬ太陽」など、社会派・骨太作品に定評のある若松監督です。
 若松節朗監督:「吉田所長は非常に有名な方で、NHKでメルトダウンとかそういうドキュメンタリーもある。映画としてやる時に、最前線で頑張っている(福島第一原発1・2号機の)当直長がメインになる。これだったら自分の力を発揮できるのではないかと思った」
 原発事故の「リアル」を追求することにこだわった今作では、津波に襲われた原発屋外の様子や原発施設も巨大セットで正確に再現しています。また、若松監督は原子炉に立ち向かった人々の“固い絆”を表現するために福島の代表的な“あるもの”を演技に取り入れました。
 若松節朗監督:「(福島民謡の)相馬流れ山という民謡をどうしても入れたくて。この発電所を預かる一番の責任者が渡辺謙さん、この人は大阪生まれで東京の本店から来ている人。唯一のリーダーであるわけですけど、福島に根差した民謡を歌ってあげることで、地元の作業員たちも発電所の所長が『俺たちの歌を歌ってくれる』ということで傾倒していく。『故郷』というのは意識して撮っていた気がします」
 「福島第一原発事故を風化させてはいけない」。そんなメッセージを強く訴え掛けるのは、美しく咲いた満開の桜並木で撮影したラストシーン。実はクランクアップしてから約1カ月後に「帰還困難区域」で撮影されたものだといいます。
 若松節朗監督:「満開の桜、美しい桜を、桜が咲いているんだけど、見る人が誰もいない。帰還困難区域だから、人が入れない。この美しい桜を誰も見る人がいないというのを。桜は40年も50年も同じように咲き続ける。廃炉作業も同じように40年も50年も…子どもたちに託されていく。原発はまだまだ終わっていないという意味合いを込めて浩市さんが『今年も桜が咲いたよ』って天国の吉田に言って、その後、苦渋の顔をして本当は涙も流してる。それがとても印象的ですね」
 映画「Fukushima50」は6日から全国の映画館で公開されます。この映画は世界73の国と地域での上映も決まっているということです。

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