「コロナに負けない」店主の命を救った“地域の絆”[2020/05/31 09:00]

新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされたイベントカフェ…
死をも考えた店主を救ったのは「常連客」でした。

店の維持費は「月200万円」
新型コロナの影響で、休業を余儀なくされたイベントスペース付きのカフェに、負担が重くのしかかります。

大野さん:
「夜逃げの前はね…首つり考えてね…」
夜逃げや自らの命を絶つことまで考えた店主。その窮地を救ったのは店が育んできた「地域の絆」でした。

横浜市青葉区にある「3丁目カフェ」店の中にはライブやイベントを行うためのステージが併設されています。経営しているのは現在73歳となる、大野承さん。大野さんが店を開いたのは6年前。そこには自分が住む町への“特別な思い”が…

大野さん:
「コミュニティスペースということで、お客様同士の交流を図りたい、と」

この町に住んで50年。大野さんは自治会長を務めるなど、さまざまな地域活動にかかわるなか、地域の人が交流することのできる場所が少ない、と感じていました。そこで大野さんは、地域の人が気軽に集まることのできるイベントスペース付きのカフェを開いたのです。
店は徐々に地域に根付いていき、年間350回のイベントが開催され、1年で約1万5000人もの中高年らが利用するほどに…

こちら81歳の花崎良政さんも、月に1度の歌声サークルでこの店を利用していた一人。

花崎さん:
「もうファミリーみたいな感じになってますよね。定期的に会う仲間がいるということが大きな支えになっておりますね」

いつしか、このカフェが地域の人たちをつなぐ“かけがえのない場所”になっていました。

大野さんは貯金を切り崩しながら店を経営。最近になってようやく、利益が出るようになってきたといいます。

大野さん:
「去年ようやっと、そこまで(利益が)乗ったんですよね。『さあこれからだ』っていう時に…」

新型コロナの蔓延(まんえん)により、3月の頭からイベントがすべてキャンセル。緊急事態宣言が出てからは、店を休業することに…。そこで大野さんに重くのしかかったのが、店の維持費です。その額ひと月で200万円…。

大野さん:
「最初はね、首をつろうと思ったんですよ。本当ににっちもさっちも行かなくて」

そんな時、大野さんの命と店の存続をつなぎ留めたのは…

利用客:
「やっぱり唯一無二の居場所かなっていうのを感じて…」
「3丁目カフェに助けられている人たちが多いから、『我々が恩返しをしたい』と。『クラウドファンディングしかないかな』というふうに思ったんですよね」

今まで店を利用してきた地域の人たちでした。
提案されたクラウドファンディングを使って、インターネットで店が存続するための費用を募ることにしたのです。
その結果、当初の目標としていた200万円をわずか3日で達成。最終的に500万円以上の支援が集まりました。

支援者からは心温まるメッセージも。
「地域の未来のために、必ず残してほしい場所です」
「復活を楽しみにしています」

大野さんが地域のためを思って作った店。その恩返しに今度は地域の人たちが大野さんを助けようと立ち上がったのです。

大野さん:
「皆さんのためにはなろうとは思っていましたけど、そこまでね思ってくださるとは思ってもみなかったですね。カフェだけは6月1日から開いてみようかなと」
「お礼の気持ちを込めて1人ずつお迎えしたいですね」

こちらも読まれています