昨年度の脱税総額は93億円「複雑・巧妙化」で最少に[2020/06/11 20:24]

 国税庁が昨年度に告発した脱税事件について、脱税の総額は約93億円で統計を取り始めて以降、最も少なかったことが分かりました。

 国税庁によりますと、今年3月までの1年間に全国の国税局が告発した脱税事件は116件で、脱税総額は約93億円でした。大阪国税局の強制調査では一見、普通のタンスの隠し扉の奥から4000万円以上の現金が見つかり、東京国税局が摘発した事案ではレンタルスペースに置かれたスーツケースから約1億4000万円の現金が見つかりました。脱税総額は統計を取り始めた1972年以降で最も少なくなりましたが、これは脱税手段が複雑化したため調査に時間がかかることなどが原因とみられています。一方、確定申告をせずに納税を免れる無申告による脱税事件の告発件数は27件で過去2番目の多さとなりました。国税庁は無申告の脱税犯は申告納税制度の根幹を揺るがしかねないとして積極的に摘発する考えです。国税庁調査査察部の寺田広紀査察課長は「近年の傾向を見ると、経済取引の国際化・ICT(情報通信技術)化によってますます脱税が複雑・巧妙化しています。悪質な脱税事案はしっかり摘発していかないといけないし、社会正義を貫くことが必要です」と話しました。また、「調査では3密にならないように、職員がマスク・手袋を着用するといった感染対策を取っている」としています。一方、強制調査、いわゆる「査察」に着手した件数は1969年以降で最少となり、国税庁は新型コロナウイルスの感染拡大などが影響したと分析しています。

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