温泉街の救世主 稼ぐ発電所って? 池上さんが解説[2020/09/18 13:31]

 持続可能な社会を目指すSDGsの取り組みが日本でも広まっています。そこでシリーズSDGs、4日目のキーワードは「稼ぐ発電所」です。

 池上彰:「18日は、1000年以上の歴史を持つ温泉地を紹介しましょう。福島の奥座敷と呼ばれている土湯温泉です。この土湯温泉は、ある出来事をきっかけに大きく変化しました。2011年の東日本大震災です。観光客が激減し、廃業する旅館も相次ぎました。そこで、温泉を観光以外にも活用できないかと考えたのです。仕掛け人は、地元のまちづくり企業の代表・加藤勝一さんです」
 元気アップつちゆ・加藤勝一代表:「(震災直後は)3日間ほど、停電になりました。これからの温泉街のエネルギーは、自分たちの資源を活用して地産地消ですべて賄える環境にしたい」
 池上彰:「そこで完成させたのが地熱発電所です。ただ、土湯温泉は元々、源泉の温度が地熱発電に利用するには低かったことから、ある工夫が必要でした」
 元気アップつちゆ・加藤勝一代表:「(Q.これは何なんですか?)これは温泉を使った地熱発電所、温泉発電所、バイナリー発電所と呼んでいます」
 バイナリー発電とは、低い温度でも発電できる技術です。水は通常100度で気体に変わりますが、高圧状態では沸点が上がります。一般的な地熱発電には、タービンを回すために地下深くの高圧状態で200度以上になった熱水や蒸気が必要です。しかし、土湯温泉の源泉は130度しかありません。そこで、36度で沸騰する特別な液体を温泉の熱で温めて発電に利用することにしたのです。一般家庭約800世帯分の電気を作ることができます。
 池上彰:「土湯温泉はその電気を売っているんですが、福田さん、年間の収益はどれぐらいになると思いますか」
 福田成美:「100万円くらいですか」
 池上彰:「正解は1億円です。こうした収入は、地域支援に役立てられています。さらに、バイナリー発電所は経営不振だった温泉街に思わぬ恩恵をもたらしました。19日はその恩恵についてお伝えします」

こちらも読まれています