社会

2020年10月8日 23:31

「場当たり的判断の積み重ね」 民間検証報告

「場当たり的判断の積み重ね」 民間検証報告
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 弁護士や医療、行政の専門家らで作る「新型コロナ対応・民間臨時調査会」は、安倍元総理ら政府関係者ら80人以上からヒアリングし、7月までの第1波の対応についての検証報告書をまとめました。


 ヒアリングで安倍元総理が「一番決断が難しかった」と話したのは、4月の緊急事態宣言でした。

 3月23日、3連休で東京の人出が増加して感染者数も増えていたことを踏まえ、小池都知事は当時ニューヨークなどで行われていた「ロックダウン」に言及し、警戒を呼び掛けました。

 報告書では政府が小池都知事のこのロックダウン発言に大きな影響を受けることになったとしています。

 食料品の買い占めや根拠のない情報の拡散などの動揺が広がる様子を目の当たりにして官邸には、緊急事態宣言を出すことで国民が一層のパニックになるのではないかという懸念が広まりました。

 安倍元総理は「小池さんがロックダウンという言葉を使ったためその誤解を解く必要があった」とし、西村担当大臣も「結果としては緊急事態宣言が遅れた部分があったと思う」と振り返りました。

 一方、報告書は官邸が突然、一斉休校を指示した時の様子も明らかにしています。

 2月27日、文部科学省の藤原誠事務次官は官邸で安倍総理から突如、全国一律の一斉休校を伝えられました。

 藤原次官から伝達を受けた萩生田文科大臣はぶぜんとした様子で、その後、官邸を訪ね、「本当にやるんですか、どこまでやるんですか」などと、総理を問い詰めたということです。

 最終的に総理が「国の責任ですべて対応する、それでもやった方がいいと思う」と話し、官邸主導で調整が進んでいきました。専門家会議の関係者は、「一斉休校は専門家会議に諮問されなかった」と証言しています。

 報告書は一斉休校が別の混乱につながった可能性も指摘しています。

 3月はヨーロッパから入国した人の感染例が非常に早いペースで増えていました。にもかかわらず、政府は中国や韓国からの入国者にとったような強力な水際対策をヨーロッパに対しては3月後半まで導入しませんでした。

 なぜ、すぐにヨーロッパからの入国を止めなかったのか。

 ある官邸スタッフは調査に対し、3月初めごろ、ヨーロッパとの行き来を止める必要性を認識していたものの、同時期に行った一斉休校要請に対する世論の反発と批判の大きさに安倍総理が「かなり参っていた」ことからさらなる批判を受ける恐れが高い旅行中止を提案することができなかったと明かしました。

 別の官邸スタッフは「あの時ヨーロッパ旅行の中止措置を取っておくべきだった。あれが一番悔やまれるところだ」と証言しています。

 調査に対し、官邸スタッフの1人は今回の一連の対応を振り返り、「泥縄だったけど、結果オーライだった」と表現しました。

 報告書は官邸主導の一連の対応について一定の評価をする一方、事前の備えが欠如し、「場当たり的な判断の積み重ねだった」としています。

 検証に参加した野村修也弁護士は、コロナ禍が日本の脆弱(ぜいじゃく)性をあらわにした面もあると指摘しました。

 「問題の根本には日本という国は危機ということに対して真正面から議論するのを回避する傾向が強いことがある」「次の準備を怠ってしまうということのないように危機は生じ得るものと前提に立って議論を進めていくと」

 400ページを超える報告書はこう締めくくられています。

 「危機は必ずまたやってくる。学ぶことを学ぶ責任が、私たちにはある」

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