ゴーン事件 元秘書室長「指示行うのが私の役割」[2020/10/30 21:42]

 日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告が起訴された事件を巡り、検察と司法取引に合意した日産の元秘書室長が裁判に証人として出廷し、「ゴーン被告の指示を行うことが私の役割だと思っていました」と証言しました。

 〈検察側の“最重要証人”〉
 日産の有価証券報告書にゴーン被告の報酬を91億円余り少なく記載したとして起訴された元代表取締役、グレッグ・ケリー被告の裁判では、大沼敏明元秘書室長が先月29日から証人として出廷しています。大沼元室長は2007年から10年以上にわたり秘書室長を務め、ゴーン被告の報酬を管理していたとされています。

 〈「未払い報酬」を管理〉
 これまでの尋問で大沼元室長は、ゴーン被告の各年度の確定した総報酬、実際に支払われた報酬、延期され未払いとなっている報酬を管理するようゴーン被告から指示されたと述べました。そのうえで、ケリー被告とともに「未払い報酬」の支払い方法などについて検討した過程を時系列に沿って証言しました。ケリー被告からは「ゴーン被告に対する延期された未払い報酬の総額は今いくらくらいなのか」などと問われたこともあり、ゴーン被告らが逮捕される5カ月前のおととし6月には、ゴーン被告の未払い報酬の額を1円単位で記載した書面を見せながら「約90億円」と伝えたと証言しました。

 〈「司法取引」に合意〉
 また、大沼元室長は司法取引に合意した経緯についても証言しました。おととし10月初旬、社内調査を担当していた監査役に「知っていることを検察に行って話してほしい」と促され、検察の事情聴取に複数回応じたと説明しました。その後、10月末には弁護士が司法取引の協議を申し入れ、11月に司法取引に合意したと述べたうえで、「合意が成立して不起訴になると言われた時には安心した」と証言しました。

 〈「清濁併せ呑む職務だと…」〉
 11回目の尋問となった今月29日、ゴーン被告との関係について問われた大沼元室長は、ゴーン被告と接するときは「いつも緊張していた」としたうえで、ゴーン被告の指示に対し反対の意見を述べたら「秘書室長から外されると思っていた」と述べました。ゴーン被告の報酬の開示逃れは間違っていると認識していたものの、「秘書室長として清濁併せ呑む気持ちでやっていた。そういう職務だと思っていた」と述べました。一方で、経営者としてのゴーン被告について問われると「近くにいて感じたのは、意思決定が早く、ぶれない人」などと話し、10年以上続けた秘書室長の仕事について「誇りを持っていたし、やりがいもあった」と声を詰まらせるながら述べる場面もありました。

 〈今後の裁判は〉
 50時間に及んだ大沼元室長への検察側の尋問はこの日で終わり、来月10日からはケリー被告の弁護側からの尋問が行われます。ケリー被告は無罪を主張していて、大沼元室長の証言の信用性などについて追及するものとみられます。

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