コロナ禍で取り残され…技能実習生の苦境[2020/11/06 22:01]

 新型コロナウイルスの影響で仕事を失った技能実習生が、帰国できず、新たな仕事も見つからないケースが増えています。

 その原因の一つとして、専門家は、技能実習生の活動や受け入れ企業へのサポートを行う監理団体の苦しい経営状態を指摘しています。

 技能実習生は一体、どんな状況に置かれているのか。

 4月までエアコンのメンテナンス会社で働いていたベトナム人技能実習生のチャン・ヴィエット・バさん(30)は「前の会社は途中で辞めたくなかったのですが、本当に労働環境が酷すぎて、辞めるしかなかったです」「日本で働きたいので、別の仕事を探さなきゃ」と話します。

 約2年前に来日したチャンさんは、仕事を辞めた後、友達の家に身を寄せて、監理団体の下で新たな就労先を探しましたが、7カ月経っても見つからず、支援団体に保護されました。

 チャンさんを保護した「日越ともいき支援会」の吉水慈豊代表によりますと、支援会では、ベトナム人技能実習生の日本語学習や生活の支援をしていますが、9月以降、保護する人数が急増しているということです。

 なぜ、こうした状況に陥っているのか。神戸大学の斉藤善久准教授は、技能実習制度が、コロナ禍などの非常事態をそもそも想定していなかったことが原因だと指摘します。

 「コロナ禍で仕事が見つからない間の生活を、すべて監理団体に背負わせるのは無理」「支援に真面目に取り組もうとする監理団体ほど、経営が苦しくなっていって、つぶれることもありうる」ということです。

 国は、新型コロナウイルスによる特例措置として、技能実習生が別の職種で働くことを認めています。

 しかし、斉藤准教授によりますと、実際にはこの特例措置が十分には生かされていないということです。監理団体が付き合いのある職種が限られているほか、自力で技能実習生を支援する余力もないからです。

 「新たな就労先が見つからない状況が現在も続いており、技能実習制度を維持していくには国の支援が不可欠だ」として、監理団体への財政支援や、新たな仕事の紹介を国が行うよう訴えています。

(社会部・山内陽平)

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