はやぶさが帰還“宇宙開発”月面基地計画も[2020/12/15 22:42]

 先週、小惑星探査機「はやぶさ2」のカプセルが無事、地球に帰還。太陽系の歴史や生命の起源に迫るもので、世界でも大きな注目を集めています。
 先月には宇宙飛行士・野口聡一さんを乗せた宇宙船「クルードラゴン」が打ち上げに成功。民間の宇宙船としては世界で初めて運用段階に入ったことが話題に。さらに今、注目されているのが…。
 萩生田文部科学大臣:「我が国は月探査活動において歴史的な一歩を踏み出しました」
 そう、月。なんと、2028年に月面基地を建設する「アルテミス計画」という国際的なプロジェクトが進められていて、日本も参加を表明しているのです。アポロ計画から50年が過ぎ、ついに月面で人が暮らす時代になろうとしていますが、実はこの月面で暮らす技術が地球が抱える“ある問題”を解決するウルトラCになるというのです。
 その一端を担っているのが今年4月、50以上の企業や研究者などが参加して設立されたスペースフードスフィア。理事を務める菊池さんは…。
 スペースフードスフィア・菊池優太理事:「2040年、その時代には1つの(月面)基地に大体100人ぐらい複数の(月面)基地で月面に約1000人くらいが滞在する時代に。地球と宇宙に共通する食の課題、その課題解決に取り組んでいく。特に私たちが目指しているのは“完全資源循環型”。すべてを月とか火星で賄っていくというのが究極的な目標になってきます」
 スペースフードスフィアが目指すのは宇宙空間で食材を自給自足すること。その技術を生かして食糧難で苦しむ人たちを救おうというのです。まだまだ構想段階とのことですが、月で想定される技術の一つがこちら。「超効率植物工場」。
 スペースフードスフィア・菊池優太理事:「本当にその完全密閉型で、資源もなるべくすべて循環をしていきながら作っていく」
 段ごとに稲や大豆、野菜に果物など様々な品種を栽培する完全循環型の植物工場。食べられる所以外はリサイクルするなどごみは一切、出さないシステムをイメージしています。さらに、宇宙空間では超貴重な水も、循環する技術を想定しています。
 スペースフードスフィア・菊池優太理事:「そもそも月の開発が加速している一番の理由が月にですね、水が見つかったと。とはいえそれが無限にあるわけではないので、このなかで後は循環していく。実際食べた後のおしっこも循環をしていく」
 栄養満点な肉や魚、酸素も作れちゃう、藻類を培養するマシーンも。これらの技術は、すでに開発が進み…宇宙を意識した完全密閉型の植物工場では、従来の植物工場よりも5倍近く多い収穫が実現し…。培養の技術では、フォアグラの生産に成功しています。他にもこちら、調理ができる3Dプリンターなどを搭載し、宇宙空間での作業中も温かい食事が取れる1人乗りのローバー。実はこれ、地球で災害が起こった時の避難所生活をも想定し、設計されています。
 スペースフードスフィア・菊池優太理事:「災害があった時に1人当たりこのくらいのスペースがあると。QOL(生活の質)と言うか人の心の問題として必要だろうというスペースに合わせて作っている。食を我慢するんじゃなくて、ある一定のスペースがあって温かいものが食べたいとかそれをしっかりと表現できる」
 宇宙という極限のなかでの生活を想定したテクノロジーだからこそ地球の様々な問題解決にアプローチができるのだといいます。
 スペースフードスフィア・菊池優太理事:「例えばフードロスの問題があると思うんですけど、SDGs(持続可能な社会)なかでは半減していくという目標なんですが、私たちは半減じゃなくて、すべてそれをリサイクルする。地球上でベターであることが宇宙だとマストになる。究極的で過酷な環境である宇宙を目指す中でそれを地球にフィードバックしていきながら地球の課題解決にも貢献していく」
 今、地球が抱える飢餓や環境問題など、世界的な問題を解決するために国連が定めた「SDGs」。その実現に、宇宙の技術は欠かせないものになっているといいます。

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