大聖堂で実験「飛沫可視化」が導くコロナ感染対策[2020/12/27 17:35]

東京・文京区にある日本最大級の教会で、「飛沫のシミュレーション」が行われました。多くの人々が集うクリスマスのミサをどうすれば安全に行えるのか‥最先端システムを使い検証したところ、意外な事実が明らかになりました。

▽コロナ禍で制限されたミサ
今月初旬、教会に運び込まれた『3Dレーザースキャナー』。複雑な形状をデータ化し記録できる測量機器で、建物をどんなところからでも見られるようになります。
実験を行う「エコ革」中田秀輝所長
「3次元の室内空間データを作り、そのデータに空調と人を入れ込んでシミュレーションする」

シミュレーションが行われるのは、東京のカトリック教会で中心的な役割を果たす『東京カテドラル聖マリア大聖堂』。美しいステンレス貼りの建物は、都庁などを手掛けた世界的建築家・丹下健三氏の手によるものです。上空から見ると、建物の形状が十字架そのもの‥コンクリートで囲まれた大空間に800人もの人々が集い、ミサや集会などを行っていたのです。しかし、新型コロナの影響はここにも影を落としていました。
カトリック東京大司教区 関口教会 天本昭好 主任司祭
司祭:「2月27日から6月21日まで、完全に一切の活動はしなかったです」

その後ミサは、以前とは違う形で再開。現在は長椅子の間隔をあけて数を減らし、参列者は信者限定に。人数も半分ほどに抑えています。さらに‥
司祭:「教会は伝統的に歌を歌うことをとても大切にしていたのですが、(参列者が)歌を歌うことも現在やめています」

本来ミサは、集まった人々が一緒に祈りを唱え、聖歌を歌いながら進みます。しかし、声を出しているのは10名ほどの聖歌隊のみ。参列者は沈黙のまま、祈りを捧げていました。
信者:「ちょっと悲しいですよね、(教会は)分かち合いとかそういった場であるはずなので」「いま(信者は)高齢化してるので、やはり感染の不安もあるので、皆さんできるだけ教会に来るのを控えている」
司祭:「どういう風にこれからしていけば良いのか、科学的根拠が分からない状況の中で、結局頼るのは行政が発表するものに従ってというのが、ちょっと見えづらい」


▽総合格闘技「パンクラス」でも検証
では、どうすれば感染リスクを減らすことができるのでしょうか。注目したのは“飛沫”です。(株)エコ革は、その場に飛散する飛沫の状態を解析する『飛沫可視化システム』を開発しました。
エコ革 伊藤高雄CEO
「その場に合った、ピンポイントで実際に(飛沫が広がる)気流解析ができるというのが一番の強み」

今月中旬、このシステムを活用した初のイベントが開かれました。500人超の観客を動員した総合格闘技『パンクラス』。システムが解析した飛沫シミュレーションでは、観客の飛沫は場内の気流に乗って中央に集まり、リング周辺に降り注いでいます。この実験結果をもとに、リングまわりを中心に30台もの空気清浄機を置き、空気を攪拌するサーキュレーターも設置しました。
パンクラス 酒井正和代表
「私たちがイベントをやることで、選手もそうですが、お客さまに感動を与える、そういうコンテンツを無くす訳にはいかない。この飛沫可視化をやって初めて分かることがあるので、これはすごく助かりました」


▽「大聖堂の検証」で見えた意外な結果
では、大聖堂の飛沫はどうでしょうか。番組では教会の許可を得て、計測を依頼。この日行われた調査では、空間のデータ採取のほか人の配置や、暖房設備による空気の流れを確認しました。
カトリック東京大司教区 カテドラル事務所 平野功氏
「こちらの部分ですね、そのスリットの部分から水平的に温風が吹いています」

大聖堂の内部は、席を取り囲むように周囲5カ所から暖かい空気が流れ込み、祭壇下の階段部分に吸い込まれる仕組みです。これらを総合的に解析したところ、意外な事実が判明しました。暖房の気流に乗って一度上昇した飛沫の一部が、冷たいコンクリートで冷やされ壁伝いに降下し、下の座席を直撃したのです。さらに飛沫は、1時間たってもその4割が残り、空間を漂い続ける結果となりました。

エコ革 京都テクノロジー事業部 中田秀輝所長
「本当に意外でした。ずっとこの辺(天井付近)に漂っているイメージでした」

この結果をもとに導かれた対策が‥
中田所長「こちらのドアと祭壇横のドア2カ所、合計3カ所のドアを半開にして空気を流す」
大聖堂の床上1.5m、椅子に座った時の顔の高さでのシミュレーション。ドアの半分を開けた瞬間、勢いよく外気が流れ込み、10分程でほとんどの空気が入れ替わったのです。

クリスマスのミサ、当日。解析結果をもとに、置かれていたパイプ椅子は撤去され、壁際の長椅子には座らないよう張り紙が貼られました。3カ所ある扉も、片側だけが開かれました。大聖堂の壁には、飛沫シミュレーションが映し出され、高齢者や基礎疾患のある人たちは、飛沫が行きにくい中央部に移動するよう案内されます。
そして‥キャンドルの灯りが運ばれ、ミサは始まりました。厳粛な空気に包まれて行われたミサの参列者は、およそ180人。大聖堂に、再び聖歌が響き渡ります。
信者:「人が集まるって確かに社会的にはちょっと不安もあるから、目ではっきり見させて頂いて、すごく参考になって私たちは感謝しています」
天本司祭:「正直言って、そんなに大げさな対策はできないので、1人1人がひとつひとつ小さなことを積み重ねていく、積み重ねるにしても『こうした方がいいですよ』という意見を今回聞けたので、今後活用してより意識を喚起した上でやっていきたいと思います」

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