【独自解析】“緊急宣言延長の効果”はどれほどか[2021/01/31 22:30]

政府は緊急事態宣言を1カ月程度延長する方向で調整に入っていますが、延長した場合どの程度の効果があるのでしょうか?


▽高齢者の割合増‥介護の現場は
1月31日、東京では633人の新型コロナウイルス感染が確認されました。1週間ごとの平均を見ると、10日時点の1700人台をピークにその後減少し、31日時点で850.1人となりました。
感染者は減ってきましたが、65歳以上の高齢者の割合は増えています。
1月はじめには週平均で11.1%でしたが、31日時点では、24.4%と2倍以上になっています。

介護施設「博水の郷」 田中美佐施設長
「高齢者の命を預かっておりますので、命を守るために緊急事態宣言が有効であるのであれば、続けていただきたいと思います。」
こちらの介護施設では、常に感染リスクと隣りあわせのため、感染防止対策を徹底しています。一番恐れているのは、無症状での感染だといいます。
実は去年11月、こちらの施設では入所者2人、職員13人の感染が確認されました。

介護施設「博水の郷」 片桐恵子介護課長
「世田谷区が行っている社会的検査というものを受けました。私どもは対策を心掛けておりましたので誰も陽性者はいないと思いながら受けたのですが、残念ながら15名の陽性者が出てしまいました。ただその陽性者全員が無症状でした。」

無症状感染を警戒し、職員はこれまで以上に気を使っているといいます。
「電車通勤ですけど、少しでも空いているような時間帯ですとか、各駅停車の電車に乗るなど工夫したり。急行よりも2倍(通勤時間が)かかっています。」「もしかしたら感染しているかもしれないと思うと怖いなって。どこで感染するのかもわからないので、本当にいつも気を張っているような状態です。」

徹底的に外部との接触を断つため、家族との面会もガラス越しです。とにかく感染者数が減ることを、介護の現場は切望しています。
田中施設長:「元気だからといって自分が感染しないと思わないでほしい。誰もが感染するリスクがあるということを思いながら生活していただきたいと思います。ワクチンが出て感染力が低くなったというのであれば、普通の生活に戻っていいんじゃないかと思いますが、今は緊急事態宣言ということで制限することは必要ではないかと思います。」

▽“宣言延長”の効果は? 独自シミュレーション
緊急事態宣言が延長されると感染者数はどうなっていくのでしょうか。AIなどを使って新型コロナの感染拡大予測を行っている、日本大学の大前佑斗さんにシミュレーションを依頼しました。

解析は、1人が何人に感染させるかを示す『実効再生産数』を元に行いました。
大前:「かなり(実効再生産数は)落ちているかなと思っていますね」
全国の感染者数は、2度目の「緊急事態宣言」開始日の7844人をピークに減少傾向にあります。仮に、予定通り2月7日に解除すると…
大前:「このように感染者数が上昇していって、緊急事態宣言前の水準、つまり7800人に戻るのは6月12日ごろであると」
感染者は一時減少するものの半月ほどで上昇し、4カ月後には再びピーク時に戻るといいます。では、1カ月、解除を延長した場合はどうなるのでしょうか。
感染者は同じように上昇していくのですが、ピーク時の7800人を超えるのは9月10日頃。1カ月の延長で、およそ3カ月の違いが出るという結果になりました。
「1カ月(解除を)延ばすと、延ばさない時より3カ月間、元の水準(感染者ピーク時)に戻るまで時間を稼げると。猶予があるということは、それだけワクチンを打てる人が増えるということになりますから、結果としてその後の感染者数の増加がすごく緩やかになる」
今後、予定されているワクチン接種が、感染者数の増加を抑える可能性があります。しかし一方では…
「(感染者の減少は)緊急事態宣言そのものの効果というより、緊急事態宣言によって人々が気を付けることで感染者が減っていることですから。気を付けないで普段通り生活しているとそれだけ感染は広がってしまうので、気を引き締めて取り組むのが重要だと思います」

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