「コロナ中退」の実態 就活では“中途採用扱い”に[2021/02/21 22:30]

新型コロナの影響で、中退に追い込まれた学生が数多くいます。彼らを取材したところ、「どうにもならない状態だった」と苦しい実情を明かしてくれました。

▽バイトできず、学費払えない
Aさん:「奨学金とアルバイト代で学費を払って大学に通っていたんですが」「中退するという決断をいたしました。」

Aさん(20)は今月、大学を中退しました。時短営業などの影響で飲食店のアルバイトに入れず、学費を支払えなくなったためです。
「大学の授業終わりの夕方から、深夜3時くらいまでアルバイトしていて、週4〜5くらい入っていまして」「コロナウイルスの影響で、シフト白紙みたいな感じになっちゃいましたね。」

ひとり親家庭で育ったAさんは、大学を卒業することに人一倍、強い思いを抱いていたと言います。
「母子家庭だったので経済的な面で難しい状況ではあったのですが」「奨学金を借りて、足りない分はアルバイト代で自分で払っていけば何とかやっていける見込みだったので」
「将来的には大学卒業して就職するっていう形で、大卒で自分の道を広げるじゃないですけど、その中で今後、母親に恩返ししていこう、親孝行していこうという考えで大学に行きたいという気持ちを強く持っていました」

国は、コロナ禍で困窮する学生に最大20万円の給付(学生支援緊急給付金)などを行っています。それでも新型コロナの影響で去年4月から12月までに中退した学生は1367人、休学した学生は4434人にのぼっています。(国の調査)

萩生田光一 文部科学大臣(16日)
「今後、年度末に向けて中退、休学者が増加することも想定され、予断を許さない状況です」
  
▽“コロナ中退者”企業が支援
就職支援などを行う「ジェイック」では、『コロナ中退119番』という大学を中退した人向けの相談窓口を設けました。

担当者「中退したのは、いつなんだっけ?」
中退した人「10月の終わりごろです。中途退学をしてしまって、ビジネスマナーとか何もわからない状態だったので」

先月8日に再び緊急事態宣言が出され、それを境に相談件数は急増しているといいます。
就職支援会社ジェイック 小久保友寛氏
「2回目の緊急事態宣言に入ってからは、1.7倍くらいに増えてきているので」「金銭的な事情のところと、人間関係」
「ずーっと家にいて、授業を受けている。友達もできないし、話を聞いてくれる人もいないし」「孤独感を感じてしまって、というのが大きな悩みというか、相談のところですね」


▽大学中退後に立ちはだかる「就活」の壁
仲山良樹さん(21)が大学を中退したのは、去年8月。それ以来、ずっと就職活動を続けています。
「いつも通り、少し安くなったもやしがあったので、食費を切り詰めないと、収入の中でおさめることができないので」「やはりコロナ禍で、学費を払えなくなったことが原因です」

Q:大学を中退する決断した一番の理由は?
「コロナの影響で両親の収入が減ってしまったのと、ビジネスホテルと飲食店のアルバイトをさせてもらっていて、コロナの影響をもろに受けるものだったので」「中退したくない気持ちも、もちろんありましたけれど、どうしようもない状態だったので、腹をくくって働こうと思って」

新型コロナで追い込まれた、大学中退。さらに雇用情勢の悪化にも苦しめられました。
「コロナの影響で企業の業績なども悪化してるところも多いと思うので、」「求人の数が少なかったこともそうですし」「やっぱり中退というプロフィールになるので、書類選考などで落とされることは多かったです」

大学を中退した人は「中途採用」の扱いで、社会人経験がある転職希望者が競争相手になります。仲山さんは半年以上、就職先を探し続け、ついに先日‥
「これですね。採用通知書」「うれしかったですね、不安や緊張がいっぱいあったのでよかったです」

来月から、サーバーの管理などをするエンジニアの仕事に就くことに。ただ、複雑な思いも残っています。
「もう少しオンラインではなく、実際に大学に行って、講義を受けて友達とかと遊んだりしたかったなという気持ちはもちろんあります」「(新型コロナを)恨んだり、なかったらなぁと思うこともあったんですけども、起こってしまったことなので仕方ないなと」
「機会があれば、大学、また通って卒業したいなっていう気持ちはあります」

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