“性指向”たった1つの遺伝子が左右 東大研究[2021/02/27 12:31]

■たった1つの遺伝子が“性指向”を左右
1つの遺伝子を働かないようにさせたメスのメダカが別のメスの目の前で体を回転させる求愛ダンスと呼ばれる動きを繰り返す。東京大学の大久保範聡(かたあき)准教授らの研究チームが確認した行動だ。

研究チームは、メスのメダカでEsr2b(イーエスアールツービー)という遺伝子を働かないようにするとオスからの求愛を拒否したうえ、みずから別のメスに対して求愛することを発見した。
Esr2bは、女性ホルモンの受け皿となる遺伝子で、働きを止めるとメスの体内にもある男性ホルモンによって、オスのような行動をとるようになる。研究の過程でメスにしかない卵巣で男性ホルモンが作られていることも分かったという。


■“性指向”遺伝子は性ホルモンの比率でスイッチがON・OFF
研究チームはさらに、女性・男性それぞれのホルモンの量が、メダカのEsr2b遺伝子が働くかどうかを左右することも発見した。
メスのメダカの体内で男性ホルモンが女性ホルモンよりも多くなるようにすると、Esr2b遺伝子が働かなくなって、オスのように振舞うようになる。逆に、オスのメダカの体内で女性ホルモンが多くなるようにすると、Esr2b遺伝子が働くようになったという。
魚類は、生涯にわたって性転換する能力があることが知られている。
研究チームは性ホルモンのバランスによって、“脳の性別”も簡単に変わることが可能になっているのかもしれないとしている。

■人の場合はさらに複雑なメカニズムか
こういった“性指向”を決める仕組みは、ショウジョウバエでは発見されていたが、ヒトを含む脊椎(せきつい)動物で確認されたのは初めてだ。
ヒトの場合は、さらに多くの遺伝子が少しずつ関わる複雑なメカニズムがあるとみられているが、まだ解明されていない。
さらに魚類とヒトの大きな違いも重要だ。ヒトの“性指向”は先天的に決まっていて、生まれたあとの環境が原因でが変わることはなく、後天的な変化はないとされる。

大久保准教授は「メダカの結果がそのままヒトに当てはまるとは考えていませんが、メダカの場合は性指向が簡単に変わる仕組みが見えてきました。これは裏を返せば、なぜヒトの場合には性指向ががっちり固まって変わらないのかを理解することに繋がり、長い目で見ればヒトの性のありようというかセクシュアルマイノリティー(性的少数者)の人たちをふくめたその性の理解にも繋がるものと考えています」と話す。

研究を通じて感じたこともあるという。
「メスとオスの中間的な行動パターンを示すような、或いは性指向を示すような(メダカの)個体も多くいました。ですから決してオスかメスかという二者択一で性は語れなくてその中間というものが動物界全体を見てみれば決して特殊なことではなくて、極々普通にあるのだと思います」

(動画中では「心の性別」と表現していますが、正しくは「性指向」です。)

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