【独自】“変異型”の感染者語る「経路わからない」[2021/03/07 22:30]

「変異(型)ウイルス」はどの程度拡大しているのでしょうか。専門家や、実際に変異型に感染した方を取材しました。

▽どこで感染した可能性が高いのか
男性「病院の先生から“イギリス株”という風に聞きました」
匿名を条件に電話取材に応じてくれたのは“イギリス由来の変異型”と診断された、神奈川県に住む40代の男性です。

「イギリス型」に感染した男性(40代)
Q:ご自身の海外の渡航歴は
「ありません。一切パスポートもないです」
Q:海外に頻繁にいく人との接触は
「ありません。一人暮らしですし、家族でもそういう海外に行くという仕事をしている者もいません。職場でも海外に行く仕事をしている同僚がいませんし、そういう人と接触していません」
Q:感染経路について
「正直不明です。どうして感染したのかちょっとわからないですね。自分の生活スタイルでコロナでかかりやすいのかな、あんまりかかりづらい生活スタイルをとっているものですから。ちょっと意外だったんですけど、さらに変異株だとは思いませんでした」

男性が感染したのは先月中旬。一人暮らしをする男性は一体どこで変異型に感染したのでしょうか?
「イギリス型」に感染した男性(40代)
「花粉が飛び始めてからちょっと咳が出始めたっていうことで、耳鼻咽喉科で処方された薬が効かなかったものですから、その週明けに呼吸器内科がある病院の診察を受けて、そこで肺炎像があるということになり、その後PCR検査を受けてコロナ陽性であるとわかりました」

男性はその後入院。療養生活を送っていると、突然、保健所から連絡があったといいます。
「私の検体から『新型コロナウイルスの変異株の疑いがある』とのことで連絡がきました」

そして病院側からは、その変異ウイルスが「イギリス型」だと告げられたといいます。感染力が強いといわれるイギリス型、その診断に男性は…
「周りの人に感染させることはちょっと不安でした、それは間違いなく不安でした。保健所の方で、職場の方に、職場の職員、私と周りにいる職場の職員全員PCR検査したということで、それが全員陰性だったとのことですから、そこは安心しました」

一方、変異型の治療法については‥
Q:医師からの説明は
「変異株に関しては感染力が強い以外は通常の新型コロナウイルスと同じものなので、治療方針は変わらないと」

事務系の仕事をしているという男性。職場の感染対策は徹底されていて勤務先も自宅から近いため、電車やバスなどの公共交通機関は使っていなかったといいます。
「基本的に私も、外出した後など手洗いして、うがいして、アルコールなどで消毒してという生活を送り、三密を回避したりとか対面で食事しないようにするとか心がけていたんですね。それでも感染したものですから、防ぐというのもなかなか難しいなと」

厚生労働省によると、これまで神奈川県で確認された変異型は13人。男性は、誰でも感染する可能性があると話します。
「イギリス型」に感染した男性(40代)
「やはりあの、基本的に感染する人はもう大なり小なり感染対策はしているはずなんですが、それでもかかってしまうことがあるっていう病気だということは知られてほしいなと思います」


▽“変異ウイルス”市中感染が増えている?
大阪府の吉村知事は5日、新型コロナに感染した287人分の検体で「変異型のスクリーニング検査」を実施したところ、64人が陽性だったと発表しました。
大阪府 吉村洋文知事
「変異株の割合というのが増えてきているのではないかと思っています。全体としては感染者がやっぱり減ってきているので、既存株が大きく減りながら、変異株が少しずつ増えてきているのではないかというのが今の僕の見立てです」

府内のある医療機関では、感染者およそ80人分のうち半数を超える46人が陽性となっていて、“変異型クラスター”が起きた可能性もあるといいます。
これは、東京都が行っている変異型のスクリーニング検査の映像です。試薬を使うことで陽性者の検体が変異型の疑いがあるか短時間で分かります。監視体制を強化するため、厚生労働省はすべての都道府県に全陽性者の5〜10%に対しスクリーニング検査を実施するよう求めています。
一方、独自に全陽性者の約60%という大規模検査を行った神戸市では驚くべき結果が…
神戸市環境保健研究所(5日)
「このリアルタイムPCRの反応によって変異N501Yの変異のあるなしが検出されるわけであります」

1月1日〜28日までの検査では変異型はゼロでしたが、1月29日からの一週間で4.6%の人から変異型が見つかると、先月5日からの一週間で10.5%、先月12日からの一週間で15.2%と変異型の割合が徐々に増加します。さらに‥
神戸市 久元喜造市長
「2月19日以降も検査は継続しているわけですが、新規に陽性になった方の半数以上が変異株に感染している」
この結果をどう捉えたらよいのでしょうか。アフリカでラッサ熱が流行した際にWHOのアドバイザーとして現地で活動し、厚労省のクラスター対策班としても活動しているウイルス学の専門家に聞きました。

京都大学ウイルス・再生医科学研究所 古瀬祐気特定助教 
「大阪と神戸で高い割合まで見つかっていてそれが全国に広がっているかどうかってことなのです、ある程度の数はあらゆる都道府県であると思っています。ただ、それがその神戸大阪で言われてるように半分程いってるかというと、おそらくそこまではないと考えていて」
「(変異型が)いそうなところをあえて調べているので高くなってしまっているということになっていると思います」

全国では19府県と空港検疫で251人の変異型への感染が確認されています(6日時点)ここ2週間で70人以上増加していて「変異型が主流の“第4波”」が到来する恐れもあります。

京都大学ウイルス・再生医科学研究所 古瀬祐気特定助教
「伝播力が高いウイルスがもし主流になった場合は次の第4波が来る時にはそれは早いタイミングで来るだろうし、来た時には従来型の株で起こるよりもおそらく変異型主流で起こった時の方が規模も大きくなってしまうと思います」

変異型への対応でカギを握るのは「ゲノム解析」です。
神戸市環境保健研究所 感染症部 岩本朋忠部長
「こちらの機械でゲノム解析を行っています。一度に24のサンプル、役18時間で結果が出ます」

神戸市では1年ほど前から、感染状況の実態を把握するためウイルスの遺伝情報を調べる「ゲノム解析」を活用してきました。
これはイギリス型変異ウイルスのゲノム情報。アルファベットの「A」「T」「G」「C」の4文字が3万字ほど並んでいます。
「武漢の配列の最初から2万3063番目の『A』が『T』に変異していることがわかります」

ゲノム解析によって「イギリス型」に31人が感染、起源がわからない「新たな変異型」に5人が感染したことが判明しました。
神戸市環境保健研究所 感染症部 岩本朋忠部長
「さらなる変異株の出現への監視体制、できるだけ初期の段階から封じ込めるというものに力を注ぐ。まず変異株であるかどうかをより迅速に判断していく必要があると思っている」

日本では全陽性者の約5%をゲノム解析していますが、大きな波が来た時への備えが必要だといいます。
京都大学ウイルス・再生医科学研究所 古瀬祐気特定助教 
「いま神戸や大阪がやっているのは良い例だと思っていて、これを日本中に広めた方がいいと思っています。日本の5%は決して悪い数じゃないんですけども、これがイギリスみたいに400万人500万人が感染した状況になった時に、今の体制だとこの5%の割合で、ゲノム解析できませんので、それに備えたキャパシティーの拡張は必要だと考えています」

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