震災から10年…犠牲者弔い続けた僧侶 コロナで死去[2021/03/10 14:57]

 東日本大震災から、11日で10年。被災地に寄り添い、犠牲者を弔い続けた一人の僧侶が、新型コロナウイルスで亡くなりました。

■銀座の交差点で被災地に“祈り”を捧げ続け

 高級店が立ち並ぶ東京・銀座の交差点で、東北の被災地に祈りを捧げ続けたのは、高野山真言宗の僧侶、望月崇英さんです。

 今年1月、新型コロナウイルスに感染して亡くなりました。66歳でした。

 激しい揺れと津波で、未曽有の被害を出した東日本大震災は、11日で10年を迎えます。死者は約1万6000人、行方不明者はいまだに約2500人に上ります。

 アルバイト先の店主であり、高校時代からの親友でもある高田顕治さんは、震災直後の望月さんの様子をこう話します。

 「とにかく、被災した方々にお経をあげる。もう、その一言。1週間も経たないうちかな、(被災地に)行くからバイト休むって言うから、『おう、行ってこい』って」

 当時、犠牲者が多く火葬が間に合わず、一時的に仮埋葬を行った宮城県東松島市にも、その姿がありました。

 担当者の東松島市役所の相沢俊明さんは、こう振り返ります。

 「一つひとつ回られて、丁寧にお祈りをして頂いたというのを覚えておりまして」

■毎年3月11日は被災地を回り“鎮魂の祈り”

 望月さんはその後、銀座に立ち、犠牲者に祈りを捧げる日々を送ります。

 さらに、少なくとも月1回は、被災地でのボランティアにも積極的に参加していたといいます。

 そして、毎年3月11日には、岩手県大槌町から南下する形で、大船渡市など、一人で何カ所も回って、鎮魂の祈りを捧げていました。

 岩手県大船渡市の岩渕正之医師は「10年経って余計苦しさが増してるっていう人も多いです。そのなかで、毎年来て頂いて、それでお祈りを捧げてくれる。我々、被災者にとっては非常に心強いことなんですね」と話します。

 常に、被災地の人々の心に寄り添ってきた望月さん。今年も、東北に向かう予定にしていたといいます。

■1月に死去も仲間が“東北への思い”継承

 ところが、去年の年末。高田さんは「(去年12月)30日に朝、メールが入りまして。熱出ちゃって、せきも止まらないから、苦しくてしょうがないからって」と連絡を受けていました。

 望月さんは、新型コロナウイルスに感染してしまったのです。

 一旦、自宅待機になりましたが、翌日、容体が悪化し入院。その後、回復せず、1月18日、望月さんは旅立ちました。

 亡くなってから半月後の望月さんの誕生日。先月5日、いつも托鉢(たくはつ)していた銀座の場所に、ボランティアの仲間たちが集まりました。

 望月さんが兄貴分と慕っていたという冒険家・地球元気村代表の風間深志さんは、「彼を知る仲間とともに、彼が残した東北への思いというものも継承して。それで向こうに出向いたり、その気持ちを被災地に向かって、常に心を捧げるという。そういう態度で生きていきたいと思いますね」と話していました。

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