復興進むも戻れぬ“ふるさと” 避難生活者4万人超[2021/03/11 19:12]

 被災した各地は大きく変わりました。

 政府が復興創生期間と位置付けた震災10年で住まいの復興事業は完了し、災害公営住宅は3万77戸。高台への移転や地盤がかさ上げされた宅地は1万8227戸が完成し、計画は100%達成したことになります。

 ただ、その一方で10年が経った今も避難を余儀なくされている人は復興庁のまとめで全国で4万1241人。

 このうち、県外で避難生活を送っている人は福島からが2万8505人と全体の7割を占めています。

 原発事故による避難指示は福島の11市町村で解除が進み、この10年で人が住めるようになった地域は増えましたが、人口は減少の一途をたどっています。

 浪江町など7つの町と村では住民票が示す人口と実際に住んでいる方の人数が異なっています。浪江町は住民票で見ると1万6650人なのに対し、実際の居住者は1579人と居住率は9.5%。隣の大熊町は2.7%。そして富岡町は12.8%にとどまります。

 現在も大熊町に住民票を残したまま避難生活を送る武内正則さんは「いつかは帰りたいという思いから住民票を移せずにいる。震災前は考えることもなかった、ふるさとへの思いが避難生活を送るようになって強くなった」と話します。

 その武内さんが今、幸せを感じるのが月に一度、帰還困難区域にある自宅に一時帰宅する時だといいます。

 しかし、この10年でふるさとの風景は大きく変わり、かつて仲間と過ごした記憶をたどることしかできないのが切ないと話していました。

 一方、住むことが可能になった地域で深刻なのが「高齢化」です。

 居住者のうち65歳以上の方で占める割合が川内村や葛尾村では45%以上、浪江町は38%、そして高齢化率が57%と居住者の半数以上が高齢者となっている飯舘村では村外から介護職員に来てもらったり、逆に高齢者に他の町の福祉サービスを受けてもらうケースもあるといいます。

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