心臓突然死 免疫細胞が予防に重要な役割[2021/03/26 19:00]

◆年間6万人以上が命を落とす「心臓突然死」

2002年に47歳で亡くなった高円宮憲仁さまや
2011年に34歳で亡くなった元日本代表のJリーガー・松田直樹さん。
死因はいずれも心臓に突然異常が発生して死に至る「心臓突然死」だ。
アメリカで年間40万人以上、日本でも年間6万人から8万人が命を落とす心臓突然死。これまでに心臓に問題が見当たらない“健康な人”でも突然襲われる。
この心臓突然死の予防や治療に繋がる可能性がある研究成果が、イギリスの科学雑誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表された。

東京大学医学部附属病院の藤生克仁特任准教授らの研究グループは、免疫細胞が分泌するアンフィレグリンというタンパク質が、心臓を突然死から守っていることを発見した。

◆心臓が正常に動くためには“小さな穴”が必要

心臓の心筋細胞は、ひとつひとつが脈動している。たくさんの心筋細胞が動きを同期させることで、心臓の全体の正常な拍動が保たれている。個々の心筋細胞の動きがバラバラだと不整脈となり、最悪の場合、死に繋がる。
心筋細胞同士の動きを同期させるためには、細胞同士を繋ぐギャップジャンクションと呼ばれる小さな穴が必要なことが分かっている。

◆免疫細胞が意外な役割

研究グループは、免疫細胞の1つである心臓マクロファージが分泌するタンパク質のアンフィレグリンが、心筋細胞にこの小さな穴=ギャップジャンクションを作ることを助けていることを突き止めた。マウスを使った実験では、アンフィレグリンを心臓マクロファージからなくすとギャップジャンクションが正常に作られず、さまざまな不整脈が現れた。こうしたマウスの多くは、わずかなストレスを加えただけで心臓突然死したという。

◆マクロファージとは

 心臓マクロファージは、もともとは血管の中を流れる白血球だ。その白血球が心臓の壁に入ると心臓マクロファージとなる。数は心筋細胞の100分の1程度しかないが、アンフィレグリンを分泌することで、多数の心筋細胞を“守っている”とみられる。

 藤生特任准教授によると、免疫細胞のこのような働きは最近分かってきたという。
従来は、細菌やウイルスなどの外敵から細胞を守る“ガードマン”的な働きが知られていた免疫細胞だが、近年は、別の働きもしていることが注目されている。

◆臨床現場では対症療法が限界 

藤生特任准教授は、東大医学部付属病院の循環器内科の臨床医でもある。
「我々がよく病院で診る人はもともと心臓が悪い、そういう人は突然死する可能性が高い。いっぽうで本当に全く原因がない、最初の症状が心停止、または重症な不整脈という方もいる。治療法も電気ショックなど受け身というか出たものに対して対応する対症療法が多い」と話す。

 今回の研究成果については、こう期待を寄せる。
「心臓突然死については、かねてから根本的な原因を見つけて、治療法を見つけることが必要だと思っていて、こういう基礎的研究が助けになれば良いと思っています」

 藤生特任准教授によると、心臓が原因で突然死した人はアンフィレグリンの値が低かったという研究もあるという。

「今後は、心臓マクロファージの状態を診ることで、アンフィレグリンを足してあげるなど突然死の予防や診断、治療に繋がるかもしれない」

(社会部 山野孝之)

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