“電子ゴミの墓場”からアート! 異色の日本人とは[2021/04/15 07:00]

 2000万円の値段が付いたアート、実は捨てられた家電などのごみから作られているのです。世界が注目する日本人アーティストの思いとは。

 中央の少女を囲むように貼られているのは捨てられた家電などの、いわゆる「電子ごみ」です。

 この絵の作者は今、世界から注目されているアーティスト・長坂真護さん(36)です。

 長坂さんの作品は捨てられた電子ごみをアートの一部に取り込んでいることが特徴です。

 その作品は海外からも高い評価を受けていて、1点2000万円以上の値段も付けられているのです。

 きっかけは4年前、アフリカ・ガーナのスラム街で出会った「世界最大級の電子ごみの墓場」でした。

 アーティスト・長坂真護さん:「先進国が大量に捨てたごみを見て、こんなものを浪費して捨てるために僕たちって発展してきたのかなと思うと悲しい気持ちになりました」

 ガーナは日本を含め、世界中の先進国から大量の中古家電や中古電子機器を輸入しているといいます。

 しかし、寿命が短いばかりか、なかには再利用できないごみのようなものもあり、すぐに廃棄されているのが実態だというのです。

 東京ドーム30個分を超える広大な土地には年間25万トンものパソコンや携帯電話などの電子ごみが捨てられているといいます。

 長坂さんが目の当たりにしたのは隣接するスラム街に住む約6000人の人々が金属を取り出すためにごみを燃やし、有毒なガスにさらされながら日給わずか500円を稼ぐために働いているという現実でした。

 ここでは20代でがんなどを患い、亡くなることも少なくないといいます。

 アーティスト・長坂真護さん:「この問題を伝えるための一番の手段は絵を描くだけじゃなくて、こういった廃材を直接、貼ってダイレクトに皆にメッセージを出す」

 長坂さんはアーティストとしては異例の経歴を歩んできました。

 ファッション関係の専門学校を卒業後、東京・新宿歌舞伎町でホストに。その後、アパレル会社を起業するも1年で倒産し、どん底で始めたのが路上の絵描きでした。

 8年間、世界中を渡り歩き、転機となったのがガーナでの出会いだったといいます。

 長坂さんはこれまでに5回ガーナを訪問し、アートの売り上げで現地に無料の学校や美術館を作ってきました。

 その先には、さらに大きな目標を掲げています。

 アーティスト・長坂真護さん:「健康で健全で地球のごみを減らすサステイナブル(持続可能)なリサイクル工場を作ろうという大きな約束をしています」

 14日から伊勢丹新宿店で開催する展覧会でもガーナの実情を伝えるだけの「チャリティー活動」で終わらせず、問題解決につなげることが重要だと話します。

 アーティスト・長坂真護さん:「一過性ではなくて、抜本的、本質的なスラムの健全化を必ずやる。このエネルギー、この思いをキャンパスに乗せた絵を見に来てほしい」

こちらも読まれています