コロナで社会不平等明らかに…サンデル氏が見る未来[2021/05/03 23:30]

『未来をここからプロジェクト』新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、アメリカ・ハーバード大学教授のマイケル・サンデル教授(68)の本が世界中から注目を集めています。“知の巨人”が語る『コロナ禍のいまをどう生きるのか』。

マイケル・サンデル教授:「エリートは貧困層を見下している。コロナによって、社会の不平等を明らかにした。私たちが築いた勝者と敗者の大きな分断について、考え直す瞬間が来るかもしれない」

ハーバード大学で40年以上政治哲学を教えているサンデル教授。日本では『ハーバード白熱教室』のテレビシリーズで有名になり、 著書は30カ国でベストセラーになるなど、世界的な影響力を持つ“知の巨人”です。10年ぶりに書き下ろされた新著『実力も運のうち』が、先月、発売されました。アメリカやイギリスの有力紙が絶賛するほど、コロナ渦のいま、注目を集めています。

マイケル・サンデル教授:「(Q.コロナが世界を変えてたこと、どんなことがあるか)パンデミックはレントゲンのようなもの。パンデミックが始まったとき、世界全体がまるで一つの共同体であるかのように言っていた。『私たち全員が同じ状態にいる』と。ところが、パンデミックが進むにつれ、私たちの社会の不平等が徐々に明らかになってきた。現在、裕福な人たちと、貧しい人や単に所得が低い人とでは、ますます違う生活を送っていると思う。そして、このことは民主主義の土台を侵食していると思う」

経済的な格差の拡大による貧困層の強烈な不満。それは、2016年のトランプ現象から続く、世界の混乱の原因と考えられてきました。しかし、サンデル教授は、混乱の原因はエリートにあるといいます。

マイケル・サンデル教授:「トップに立った人たちは、成功は自分たちの努力によるものだと考えるようになった。なので、自分たちは大量の富を受け取るのにふさわしいと思う。これは“能力主義の横暴”。エリート層は苦しんでいる人々を見下している。そして、人々は見下されていると感じると、社会から疎外され、力を奪われている、自分たちの貢献に意味がないと思う」

「子どものころから勉強していい大学に行ったから、高い給料をもらって当然だ」能力主義と呼ばれるこうした考え方は、貧しい人たちの自信を失わせ、爆発的な不満を生んだと語ります。

マイケル・サンデル教授:「貧しい人たちは努力が足りなかったから苦しんでいるのか。それとも私たちがこの数十年間に作り上げた経済のせいか。エリートや政治家は、この質問を自分に問うことが重要。人間は、ちょっと成功すると、自分たちの功績だと考えてしまうもの。運がよかったということを忘れ、恵まれていることや、周りの人々の存在さえも忘れる。だからこそ、運の役割を忘れず、謙虚であるべき。私たちは、お互いがいて成り立っていることを認識すべき。そうすれば、数十年続いた分断や不平等を癒すだろう。これが起きるかどうかは、まさに私たち次第。でも、これは、私の将来に向けての希望だ」

なお、インタビューの完全版は記事下の【「コロナで社会不平等明らかに…サンデル氏が見る未来」完全版】からご覧いただけます。

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