東大病院が検証“ICU増床”の影響…病院長に聞く[2021/05/04 23:30]

厚生労働省アドバイザリーボードのメンバーで、増え続ける新型コロナウイルスの重症者受け入れ対応にあたっている東京大学医学部附属病院の瀬戸泰之病院長に、ひっ迫する医療体制を立て直すには、どうすればいいのか話を聞きます。

4日の全国の重症者数は1083人と4日連続で1000人を超えています。

(Q.重症者の増え方、変異ウイルスの拡大について、どのような実感を持っていますか)
東大病院では先週から重症者が増えてきています。変異株について、最近、入院してきた患者で、結果が判明している方々、全員が変異株でした。そのうち8割以上が『N501Y』でした。変異株が東京でまん延していると、現場でも実感しています。

重症者が増え続けると、医療体制にどのような影響が出るのか、瀬戸先生のシミュレーションです。東大医学部附属病院では、救急患者や大きな手術をした患者が入るICU=集中治療室が合わせて46床あります。現在、8床がコロナ患者用に充てられています。東京都からは「できるかぎり増やすよう」依頼がありました。さらに6床増やして14床にした場合、残り32床ありますが、人手などの問題で14床が稼働できなくなります。

(Q.これは、なぜでしょうか)
コロナの患者は、原則、個室で治療を行わなければなりません。また、コロナの患者は、通常のICUに入る人と比べると、平均滞在日数が倍近くなります。それだけベッドを使わなければいけません。そして、何より、看護師をはじめとした医療職員の人手がかかります。看護職員の配置でいいますと、通常の集中治療の3倍かかります。そのため、ベッドを制限しないといけません。

結果、救急搬送で、1カ月で三次救急73人が受け入れられなくなります。また、ICUでの治療が必要な人45人の治療ができなくなります。

(Q.これは、どのような状況ですか)
三次救急というのは、大きな交通事故や大きな外傷の人たちで、この受け入れが困難になります。通常の集中治療は、大きな手術の後、あるいは臓器移植の後、心筋梗塞、脳梗塞の方で、この受け入れが、かなり制限されるということです。我々としては、こういった治療を行うことが大学病院の役割だと思っていますので、コロナの治療を行いながら、これを維持しないといけない。非常に大きな局面に立っているということを理解していただきたいと思います。

病床をなかなか増やせないなかで、ICUで回復した患者を、スムーズに一般病床に移動する仕組みを取り入れています。東大が、3つの大学病院から患者の情報を集め、受け入れ先の病院を調整しています。

(Q.これは、うまくいっているのでしょうか)
重症の患者をより多く受け入れるためには、ICUの病床の回転をスムーズにしないといけない。コロナ患者は、滞在日数が長くなる傾向にありますので、その打開策の一つで始めました。ICUの滞在時間が長くなると、ベッドを使ってしまうということと、もう一つ、患者のきめ細かな対応をしなければいけません。例えば、介護が必要か、リハビリが必要かなど。だから、こういった“マッチング”をいかにうまく機能させていくかということが大変重要だと思っています。もちろん行政に援助もしていただいていますが、細かな対応が必要だということです。

(Q.これは独自に構築したのでしょうか)
これは、3大学の病院長と話をして、あとは関連施設に協力を呼び掛けて2月から始めました。

さらに、重症者を一つの県で受け入れ続けてパンクする前に、余裕のある県に受け入れてもらうなどして、融通する仕組みを提言されています。

(Q.課題を教えてください)
これは“広域搬送”といいます。現状、救急医療は、各都道府県単位で考えられています。ですので、東京都で発生した救急患者は、東京都のなかの医療機関に。ただ、東京で重症者があふれてしまうと受け入れが困難になります。そのときに、隣の県など、今までの救急の垣根を越えて、コロナ重症者に関しては、広い範囲のなかでの受け入れを考えていただきたい。ぜひ、その立て付けを考えていきたいと思っています。

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