予報士のつぶやき 新平年値と温暖化のカンケイ[2021/05/06 15:00]

テレビの天気予報などで「気温は平年並みでしょう」などの言葉を聞くことがあるかと思いますが、この「平年並み」をどのように決めているかご存じですか?

▼「新しい平年」が間もなく使用開始
“平年”とは30年の平均のことで、10年ごとに更新されるのですが、その更新が、来る5月19日に行われます。
5月19日からは、1991年〜2020年までの30年分を平均した数値が「新しい平年」です。
前に使っていた平年は1981年〜2010年でした。
(5月5日に沖縄・奄美で梅雨入りの発表があったのですが、この梅雨入りの平年は、一足早く、新しい平年値が使用されたようです。)

▼新旧平年値を比べてみると…
ざっくり言うと、新平年値は、旧に比べて
・降水量が増えた
・暑くなった
・雪が減った
といった特徴があります。おそらく皆さんの体感とも合致するでしょう。
新旧平年値の差は、1981年〜1990年と、2011年〜2020年の差によります。
1980年代は、当時大寒冬とされた59豪雪や61豪雪などがありましたが、その部分が新平年値には含まれなくなりました。
一方で含まれたのは都市化・地球温暖化などの影響が顕著に出ている2011年以降のデータ。
その違いがデータに正直に表れた形です。

▼青森の年間降雪量は1mも減少
新旧をもう少し具体的に、比較してみましょう。
例えば
東京の真夏日(30℃以上)年間日数
   旧 46.4日 → 新 52.1日
   東京の新平年値52.1日は、前橋の旧平年値と同じくらいです。
   東京が前橋並みになったといえば、少しわかりやすくなるでしょうか。
熊谷の猛暑日(35℃以上)年間日数
   旧 13.9日 → 新 18.1日
青森の年間降雪量
   旧 669cm → 新 567cm
近年は雪不足で営業できなくなるスキー場のニュースが毎年のように聞かれます。
幸運にもこの間の冬は12〜1月の寒波の影響で雪は豊富でした。
しかし来年はどうなるか、わかりません。
一回の寒波による降雪量は地球温暖化によって増えるという研究報告もありますが、長期的な累積降雪量で考えると、地球温暖化の影響により、減っていくと予測されています。
ウィンタースポーツの愛好者の皆さんが雪不足で悩まれる頻度も増えるでしょう。

▼豪雪地帯とウィンタースポーツ
愛好者だけでなく、メダリスト達にとって、降雪量の変化は特に重要です。
平昌五輪スキー・スノーボード選手の出身地に注目すると、渡部暁斗選手は長野県白馬村、高梨沙羅選手は北海道上川町、平野歩夢選手は新潟県村上市と、皆さん豪雪地帯の出身です。
やはり幼い頃からウィンタースポーツに親しんでいることが強さにつながっていると思います。

4月にはアメリカのバイデン大統領が気候変動サミットをオンラインで開催しましたが、私たちもできることから対策をしていく必要性を感じます。
個人でできる対策として、自然エネルギーを主力している電力会社に切り替える、フードロスを削減することで温室効果ガスの排出量を減らすなど、たくさんの対策があります。
私も個人でできることを探して楽しみながら実践していきたいと思います。

テレビ朝日ウェザーセンター 気象予報士 千種ゆり子

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