美しい自然がある町 ライフラインのピンチを救え[2021/05/07 09:42]

 清流が流れる富山県のある集落では過疎化と高齢化が進むなか、「水」を巡って大きな問題が生じていました。これを救ったのもまた「水」でした。

 富山県朝日町笹川。雄大でありながら、どこか優しい印象の自然が訪れた人を出迎えてくれます。まるで日本の原風景のなかにいるようです。

 富山県の東の端、北アルプスのふもとにある笹川地区。豊かな自然。この時期、水たまりではオタマジャクシが元気に泳いでいます。

 しかし、約100世帯260人が暮らすこの地区は、ある深刻な問題を抱えていました。

 集落から約1キロほど山手に上がってきました。こちらが水源地になります。地区の人たちが独自に管理・運営しているんですが、かなり老朽化が進んでいるようです。

 笹川自治振興会・竹内寿実会長(69):「一昨年におきまして(水道管が)7カ所破裂しました。もし断水すれば町に要請しまして給水車で対応することになります」

 深刻な問題。それはこの水道管です。地区のライフラインの要として40年前に改修されて以降、老朽化が進み、そろそろ更新が必要な時期を迎えていました。しかし、国からの補助もなく、地区では必要な費用、約3億円が確保できません。人口は減り、高齢化と過疎化も進んでいました。

 笹川自治振興会・竹内寿実会長:「10年の間に4分の1の(人口)減少で人口流出・減少が激しいわけであります」

 この地区の振興会の会長を務める竹内さん。この水道管の問題をどうにかしようと取り組んでいました。そうしたなか、まさに救世主が現れました。

 笹川自治振興会・竹内寿実会長:「ここにおいて地元出身の深松組様が小水力発電を起こして、その電気を電力会社に売って、その資金をもとにして水道施設を改修しようと」

 深松組・深松努社長:「この笹川でずっと遊んでいた記憶が鮮明に残っておりまして、弊社のルーツである水力発電工事でこの笹川地区を維持することができる。建設会社にとって、男にとって、こんな冥利(みょうり)に尽きる話はございません」

 地区を流れる清流「笹川」。年間を通して流量が豊富で発電に適していると判断されました。こうして小規模水力発電設備を設置するプロジェクトが始まりました。年間約4000万円の売電収入が見込まれ、金融機関などから発電設備の建設費用に加え水道の改修費用合わせて7億7000万円を調達することに成功しました。

 地区の住民:「夢みたいな感じ。水道が段々と古くなってきてるでしょ」「うれしい、ありがたい。ありがたいよ。私らじゃ何もできないもんね。個人ではね」

 笹川自治振興会・竹内寿実会長:「非常に大きな課題だったんですけれど、今回こういったプロジェクト事業によって水道施設を改修していこうと大変ありがたい事業であります」

 深松組・深松努社長:「田舎って問題だらけなんですよ。その問題を解決するのが仕事で、たまたま、うちが建設業をやっていて発電所建設工事で会社を始めたと。自分の一番得意な技術で地区を守ることができる。本当にご縁を感じていますし、自分の生まれ故郷ですから、良かったなと思っています」

 今回取材した笹川地区の水道ですが、振興会の会長によりますと、給水する世帯の少ない簡易水道施設といわれるもので、維持管理をそれぞれの地域の責任で行うシステムになっているということです。地域の人口や働き手が減ってしまうと影響が大きいと言えますね。今回建設が決まった発電所ですが、これを巡って地元の雇用も生まれるメリットがあると地元出身の社長は話していました。

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