矛先が「選手」に向かないよう…五輪代表監督の思い[2021/05/16 22:30]

空港の「水際対策」を強化するなど“インド型”変異ウイルスへの警戒が強まる中、2カ月後に迫っているのが、東京オリンピックです。開催すべきかどうか、海外の人々はどう見ているのでしょうか。

▽海外メディアの反発
アメリカの有力紙ニューヨークタイムズは、「オリンピックは中止だ」と題した寄稿を掲載。
「中止できない理由は主に3つあります。お金と…お金と…お金です」
(米紙ニューヨークタイムズ11日付・パシフィック大ボイコフ教授)

フランスの有力紙ル・モンドは…
「世界中から8万人近い外国人が集まることはオリンピックを『変異株の祭典』にしてしまう」
この記事を書いた東京特派員に聞きました。
仏紙「ル・モンド」東京特派員 フィリップ・メスメール記者
「(世界中から)変異株を持った人が集まると、『五輪型の変異株』を作る可能性があります。真のリスクは新しい変異株の祭典なのです」
「最低でも延期すべきです」

緊急事態宣言前の3月に発表されたアメリカ、フランス、中国、韓国、タイの世論調査では「中止すべきだ」と「さらに延期すべきだ」を合わせた回答が、すべての国で7割を超えています。(公益財団法人「新聞通信調査会」3月)

その一方で、オリンピック開幕に向けて“時計の針”は進んでいます。
中国の習近平国家主席は7日、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長と会談し「東京オリンピックの開催を支持する」と強調。習近平指導部にとって来年の北京オリンピックは最重要課題のひとつで東京大会の円滑な開催を北京の成功につなげたいものとみられます。

ブラジルでは14日、東京オリンピックに出場する選手へのワクチン接種を開始。オーストラリアや韓国などでもすでにワクチン接種が進んでいます。

参加する選手たちは、今どんな思いでいるのでしょうか。今月7日、ロシアで行われた柔道の国際大会。男子100キロ超級で、銀メダルと銅メダルを獲得したブラジルの柔道男子。その代表監督を務める藤井裕子さんに話を聞きました。

記者:「東京オリンピックにチームで参加することに関してみなさんどういう風に考えている?
藤井監督:「すべてをかけて戦うという気持ちでいますし、スタッフも全員それに向けて準備をしている状況ですね。いま我々ロシアにいますけど、割としっかりバブルからすべての参加者が出ないように管理してくれています」

大きな泡で包み込むイメージから名付けられた『バブル方式』。選手やコーチなど関係者を会場ごと隔離し、外部との接触を断つための運営システムで、この一年、世界中のスポーツ大会で採用されてきました。
ブラジル選手団はオリンピックに向け、バブル方式で行われる国際大会への海外遠征を続けています。

藤井監督:「やっぱり最初の頃が一番大変でした。マスクをつけて歩くだとか食事の前に手をアルコール消毒して、手袋をつけてビュッフェスタイルのものを取るだとか、テーブルも大人数で座ってはいけないとか、習慣になるまではすごく大変でした」

大会期間中、選手たちは定期的なPCR検査を義務付けられます。公共交通機関は使用できず、移動は専用バスです。
藤井監督:「トルコに行った時はブラジルからの入国はどの国もいま入ってくれるなというような状況なんですね、飛行機には乗せられませんということで、空路であれば1時間ちょっとのところをバスで10時間かけて行った」

選手たちの移動を競技会場や宿泊施設に限り、泡の中で外部と隔離するバブル方式。
記者:「社会とスポーツイベントとバブル方式による切り分けはできる?」
藤井監督:「それはできると思います。(運営側が)しっかりオーガナイズすれば難しいことではないと思うし、バブルから出た者は即追放というか、非情ではありますが、そういう厳しいルールにして今もやっていますから」
東京オリンピックでも導入が検討されていますが、選手だけで1万人以上が参加するため、感染拡大をどれくらい防げるかは未知数です。

開催への批判が高まる現状について藤井監督は…
藤井監督:「選手たちが悪く言われるようなことだけにはなってほしくないというふうに思うんですよね。多くの人が苦しんでいる横で、そんなことは知ったこっちゃないという思いで戦う人は誰もいませんので」「こういう時期だからこそ周りの人にエネルギーを与えられるような、そういう場があってほしい。私としては、どんな形でもいいからあってほしいと思います」

5月16日『サンデーステーション』より

こちらも読まれています