「障害×アート」ビジネスで変える社会…双子の挑戦[2021/05/26 23:30]

『未来をここからプロジェクト』。障害者のあるアーティストの作品を世の中に売り出そうとしている双子の兄弟がいます。2人がビジネス化の先に見据えるのは、“優しい未来”でした。

自閉症と知的障害のあるアーティスト・小林覚さん(32)。作品の特徴は、自由奔放に描かれた線と明るく豊かな色彩です。小林さんの作品は、老舗洋品店のネクタイのデザインにも採用されています。

これを手がけたのは、松田崇弥さん(30)と文登さん(30)、双子の兄弟が2018年に立ち上げた株式会社『ヘラルボニー』という会社です。
松田崇弥さん:「『支援』『貢献』という言葉には逃げないというのを大切にしていて、純粋に素晴らしい作品だと自分たちとしても強く思っているので、デザイン・アートの文脈でも受け入れられると強く思っている」
松田文登さん:「彼らの生きざまが、カッコイイとか、そういったことを知ることによって、視点が変わっていくのかもしれないし、それが生きやすさにつながっていくのではないかと」

障害者ではなく“個性豊かな”アーティストとして、一人ひとりとライセンス契約を結び、その作品を商品化するという、これまでにない事業を立ち上げました。今では、デザイン性の高さが評価され、駅舎や、何気なく目にする建設現場の仮囲いにアートを施す事業などを展開してきました。障害のあるアーティストの才能を“異彩”として位置付けることで、障害のイメージを一新することを目指しています。

2人のビジネスの原点は、自閉症と知的障害がある4歳上の兄・翔太さんの存在でした。実は『ヘラルボニー』という会社名も、翔太さんが生み出した言葉です。

松田文登さん:「『ヘラルボニーってどういう意味なの』と兄に聞くと『わからない』と言う。障害のある人たちが、心ですごい面白いと思っていても、それが社会に通じていないことは、まだまだたくさんあるなと。それをちゃんと言語化していけるような、そんな会社でありたいと思って、『ヘラルボニー』という兄の言葉を借りて会社名にした」

社会が見る兄と、自分が見る兄には、大きな隔たりがあると幼いころから思っていました。文登さんが小学4年生のときに書いた作文です。
『ぼくが、いつもいやだなと思うことがあります。それは、デパートやレストランに行ったときに、お兄ちゃんのことをじろじろ見る人がいます。こういうときに、いつも思うことがあります。障害者だって同じ人間なのに』
松田文登さん:「兄に対してバカにされる経験したので、自分にとっての怒りの矛先は、社会側に向いていた」

そして、ヘラルボニーが重視しているのは、障害のある人の収入を増やすことです。
松田崇弥さん:「店頭で『障害者がこれ書いているの』『なんでこんなに高いの』と言われた。まだまだ福祉から生まれるものや、障害のある人が作っているものは、安いと思われてしまっている」

ヘラルボニーは作品を商品化した場合、販売価格の3〜5%をアーティストに還元しています。アーティストの小林覚さんの両親は、このビジネスについてどう思っているのでしょうか。
父・俊輔さん(66):「“アーティスト”って急に照れ臭い感じ」
母・眞喜子さん(64):「“変な子”だとずっと言われて、“子育ての失敗”のような話をされてきたけど、いまの状態は夢のようで幸せ」

障害者に対する価値観を変えるため、歩みを進めるヘラルボニー。2人が思い描く未来とは。
松田文登さん:「“障害”と話した途端に、“欠落”と連想するのではなくて、『障害』=『違い』『個性』という社会になったら、いろいろなことを面白がれると思っていて、ビジネスを通じて、アートというフィルターを通じて、障害のある人との出会いを作っていくことで、接し方が変わっていくのかもしれない。認知度を広げていって、優しい世界になっていったらいいなと思う」

なお、インタビューの完全版は記事下の【「「障害×アート」ビジネスで変える社会…双子の挑戦」完全版】からご覧いただけます。

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