血統守る…人気レッサーパンダが“嫁入り”[2021/05/27 08:48]

 静岡市の動物園で令和になって生まれたばかりのレッサーパンダが親元を離れ、名古屋市に引っ越します。嫁入りだということですが、動物園にとってはある重要なミッションがありました。

 リンゴを頬張るシセンレッサーパンダのれいか。静岡市の日本平動物園で2年前の6月に生まれました。

 端正な顔立ち、そして器用な食べ方。テーブルマナーもわきまえているようです。

 それもそのはず、れいかはアメリカ由来の母親と、中国の血を引く父親から生まれた貴重な血統を持っているのです。

 しかし、今月末、親元を離れることになりました。

 レッサーパンダ担当飼育員・中村あゆみさん:「名古屋の東山動物園が新しいレッサーパンダの獣舎を建てるということで、日本平動物園としても国内の貴重な血統の繁殖を進めていきたいため、今回、東山動物園に移動することになりました」「(Q.同じ動物園内での繁殖では駄目なのか)駄目ではないのですが、れいかが貴重な血統のなかで、一番若かったので、他の動物園に出す際に若くて適応力が高く、長くその動物園で愛されるだろうと。一方で、うちの動物園にもメリットがあり、れいかがいなくなることで、弟や妹が生活する場所が増えるんです。レッサーパンダは単独生活の生き物で、1つの部屋に基本は1頭しか飼育ができないため、部屋数が少し確保しなくてはいけない問題になる」

 レッサーパンダは毛皮目的の乱獲などで野生の個体数が減り、「国際自然保護連合」の絶滅危惧種に指定されています。

 8頭を飼育する日本平動物園は繁殖に力を入れていて、国内にいる個体の種別の調整も担っています。

 人気者のれいかを嫁に出すことは、貴重な血統を維持するための決断でした。引っ越しは5月31日に迫っています。

 レッサーパンダ担当飼育員・中村あゆみさん:「れいかは少し繊細なところがありまして、まだ子どもみたいに小さなことに怖がるところが多々見受けられます。そういった意味で他の子のお引っ越しよりも、ちょっと心配ではあるけど、ただこういった試練を乗り越えて成長していってほしいなという気持ちもあるので、応援したいと思っています」

 れいかは繁殖のために引っ越すということなんですが、元々、動物園の動物はそれぞれの園にとって大事な財産として扱われていて、絶滅を防ぐための繁殖という理由であってもよその動物園に引っ越すということはそんなに簡単ではありませんでした。

 今回は、ブリーディングローンという制度をとっていて、れいかは日本平動物園から東山動物園に繁殖のために無償で貸し出される形です。

 れいかが暮らしていくのは名古屋市の動物園ですが、所有するのは日本平動物園ということになります。

 ブリーディングローンは希少動物の維持にとっては有効だといえます。

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