予報士のつぶやき「6月 今昔氷物語」[2021/06/30 13:56]

水無月と鳴神月。どちらも6月の異名である。この2つはともに6月であるということのほかに、あるキーワードで結ばれている。「氷」だ。

水無月は6月の異名としては最も有名なものだと思う。「睦月、如月、弥生…」と、小学校で暗唱した方も多いだろう。この水無月という名前のお菓子をご存じだろうか。白いういろう生地の上に小豆をのせた三角形の和菓子だ。

昔は6月に氷室から取り出した氷を口に含み、暑気払いを行ったという。ただ、庶民にとって氷は高級品であり、とても手の届くものではなかった。そこで、水無月というお菓子が作られた。三角形のういろうを氷に見立て、暑気払いを行ったのである。

一方、鳴神月は、あまり知られていないかもしれない。旧暦6月は現在でいう6月下旬〜8月上旬頃にあたり、雷鳴がとどろくことが多い時期であることからこの呼び名がついたという。

今年は新暦の6月も雷が多かった。6/1〜29に観測された雷の日数は、長野でなんと11日。その他、福島や埼玉の熊谷で9日、宇都宮や前橋で8日、甲府で7日など、各地で3日〜4日に一度は雷が鳴ったことになる。

雷を発生させるのは発達した積乱雲だ。今月は梅雨前線が本州から離れた南海上に停滞することが多く、代わりに上空に寒気が流れ込みやすかった。上空に寒気が流れ込むと、地上との気温差が大きくなることで積乱雲が発達しやすくなる。

発達した積乱雲がもたらすのは雷だけではない。直径5mm以上の氷の粒である雹が降りやすくなる。熊谷地方気象台によれば、大正6年の6月には、直径29.5cmもの大きさの雹が降ったという記録が残されているというから驚きである。

ここまで極端な大きさの物はめったに降らないが、小粒でも油断できない。時には、自動車や建物の窓ガラスを破損し、農作物や果樹などに大きな被害を与える。今月も全国各地で雹が確認されている。

空から落ちる氷を見て、先人たちが何を感じたかは気になるところである。今夜はオンザロックを片手に氷に思いをはせるとしよう。

テレビ朝日気象デスク 藤枝知行

こちらも読まれています