「プライベート花火大会」苦境の花火師が再起の策[2021/08/29 19:14]

 新型コロナウイルスの感染拡大で今年も花火大会の中止が相次いでいます。打ち上げ花火店が苦境に立たされるなか、ベテラン花火師が始めた起死回生の秘策とは。

 コロナ禍で廃業の危機にあるベテラン花火師が始めたこと…。それはなんと、個人からの依頼に応じる「プライベート花火」でした。

 火薬の原料となる硝石が採れたことから花火作りが盛んになった埼玉県秩父市。この地で、大正元年に創業した老舗「金子花火」。

 4代目の金子克さん(47)は、未曽有のコロナショックに、頭を抱えていました。

 金子花火4代目・金子克さん:「夏は何とかなるだろうと思っていたら軒並み中止。絶望的でした」

 コロナ禍の前には、夏だけで100件以上あった花火大会の打ち上げ依頼が、去年はわずか5件。

 今年も軒並み中止が決まり、なんと約1万発が行き場をなくしていました。

 金子花火4代目・金子克さん:「(Q.全然人がいないですね)今は、休んでもらったりしています。私一人です」

 去年の6月、15人いた従業員全員を解雇や休職扱いにせざるを得なかったといいます。

 金子さん自身も仕事がないため、4回、土木作業のアルバイトをして家計をやり繰りする毎日…。

 そんな状況を打開しようと始めたのが個人からの依頼に応じる「プライベート花火」。

 金子花火4代目・金子克さん:「ご家族の誕生日や記念日にどうかなと」

 「45発で5万円」からという低価格プランを用意し営業に力を入れています。利益は微々たるものだといいますが、そこには、ある思いがありました…。

 金子花火4代目・金子克さん:「(プライベート花火を)注文頂けるようになれば、また従業員も戻って来てもらって、一緒に花火作りに入れるかなと考えています」

 この日、20代の女性から依頼が入りました。

 依頼者・まゆさん:「1口5万円というのを見て、これだったら手が出しやすい。ぜひ家族のためによろしくお願いします」

 河川敷での、“小さな花火大会”です。

 依頼者・まゆさん:「コロナで花火大会だったり、なんでも全部中止になっちゃって、なにも思い出がないなと思ったので」

 コロナ禍で、さびしい夏休みを送っていた弟たちへのプレゼントだといいます。

 さぁ、打ち上げ開始。

 あいにくの雨…それでも美しく夜空を彩る花火。この日は75発で15万円。小さな花火大会は、最高の思い出になった様子。

 苦境に立ち向かう、ベテラン花火師の想いは…。

 金子花火4代目・金子克さん:「早く従業員とまた一緒にやっていけるように。花火屋を続けていきたいのが一番の願い」

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