大都市水害“命を守るポイント” 今からできる防災[2021/09/01 21:00]

 大型の台風や豪雨災害が相次ぐなか、発災時は防災の知識が命を守ります。もし、大都市で大規模な洪水が起こったらどのように行動すればいいのでしょうか。

 9月1日は「防災の日」。自然災害に対する備えや対策を強化し、防災意識を高める目的で1960年に制定されました。関東大震災が発生した日でもあり、台風が多くなる時期の始まりでもある、9月1日。ツイッターでも「防災の日」がトレンド入りするなど、自然災害の多い日本で防災への関心の高さが分かります。

 例年相次ぐ九州などへの豪雨災害や大型の台風。地方だけの話ではありません。

 2019年10月に起こった台風19号では、東京・世田谷区などを流れる多摩川が二子玉川駅の周辺で氾濫しました。

 都市部で水害が起きた時の危険性について、水難学会の斎藤秀俊さんは「リスクが高い」と話します。

 水難学会・斎藤秀俊会長:「一番の問題点は人口密集地だということ。かなり広範囲にわたって洪水が起こるということになれば、どこにどういう手段で逃げればいいのかという問題まで考えなければならない。地方を考えたときと都内を考えたときだと、影響を受ける人の数があまりにも大きすぎるということで特に大都会の洪水はかなり危険視されている」

 大都市の洪水…。実際に東京北部から埼玉にかけた地域では、水はけが悪い地形のため、何度も水害に襲われてきました。

 そこで作られたのが、世界最大級の地下放水路「首都圏外郭放水路」。大幅に洪水の被害を軽減できるとしていますが、斎藤さんは「まだまだ予断を許さない」といいます。

 水難学会・斎藤秀俊会長:「荒川とか隅田川とか上流の方で雨が降ったときに、それを直に東京湾に注ぎこまないといけない。このあたりが海のレベルから見て低い土地になっていますから、こういう所は沈み始めたらあっという間に洪水が起こってしまう」

 ではもし、水害が起こりそうになったら、何をすればいいのでしょうか。

 まず考えられるのが、避難所などへの避難。衣類や必需品を用意する時に、命を守る「ポイント」があります。

 水難学会・斎藤秀俊会長:「あらかじめちょっと大きなごみ袋でいいと思うんですけど、その中に衣類を詰めてリュックサックに入れる。これは避難途中で雨にぬれて使い物にならなくなるのを防ぐばかりでなく、いざというときに浮き具になります。避難途中に溺れそうだと思ったら、リュックの浮き具で浮力を使って救助を待つことができる」

 避難途中にもしものことがあってもリュックなどを浮き具にして命を救うことができるといいます。

 水難学会・斎藤秀俊会長:「おなかの上にリュックサックやペットボトル、浮くものなんでもいいですけど、浮きになるということをやって頂くとどんな方でも浮きます。例えば完全に沈んじゃう場合と、何とか胸くらいまで出たという場合と色々ある。胸くらいまでですぐに沈まないのであればそこから移動しないで、救助を待つ。立たなかった場合、背浮きという浮き方がありますけど、背浮きになって救助を待つ」

 とはいえ、安全に避難を済ませるのがベストです。まずは道路が冠水していたら避難をやめて、今いる建物の高い場所で安全を確保する。もし避難中に冠水が始まってしまった場合は、気を付けるポイントが2つあります。

 水難学会・斎藤秀俊会長:「水面では分からない穴が道路はあちこち空いている。あるいは穴でなくてもちょっとした段差なんかがあると、一気に自分の体が沈みこんだり、本当なら溺れないような深さなのに溺れてしまうというようなことが起きます。そういった“トラップ”に注意することが一つ。二つ目が流れなんですね。大体秒速1メートル位の流れになると人間は立っていられなくなる。秒速1メートル位の流れの中で深さが膝上位までになってくると、歩くどころかその場に立っていることも困難。どうしても歩かなければいけない、というのであれば膝下までの水深。膝上から腰は黄色信号、腰から上は赤信号」

 実際に2019年の台風19号が発生したときは、東京・世田谷区の住宅街で膝上までの冠水が起こって歩けなくなり、ゴムボートで救助される人の姿もありました。

 また、我々の生活に身近なのが「地下鉄」。駅や地下街にいたときは、とにかく地上に出ることを最優先にしなければなりません。

 水難学会・斎藤秀俊会長:「地下街で水の浸水が始まったら、電気が消えますし暗闇の中での避難は不可能。どんどん水位が上がっていったならば、いつか溺れるということを覚悟しなければいけない」

 水害時は危険な「地下」。中国では河南省を襲った7月からの豪雨で、50人以上が地下室や地下鉄などへの浸水で死亡しました。

 命を守るためには、「知っておくこと」が重要だと話す斎藤さん。きょう、今からできる「水害への防災」については…。

 水難学会・斎藤秀俊会長:「一つ目は自分の住んでる地域のハザードマップを確認しておくことですね。近くの川があふれたら自分の所はどれくらいの水位になるかということを把握しないといけない。二つ目は避難所はどこにするかということですね。避難所に行くにしても冠水してる所をわざわざ通ってたら大変なことになるので、自分の家よりも高い所を通って、避難所はさらに高い所にあるというルートと目的地をしっかりと決める」

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