ミュー・カッパ…警戒すべき変異株は?専門家に聞く[2021/09/16 23:30]

東京医科歯科大学では、医学部附属病院を受診したコロナ患者の検体をゲノム解析しています。先月、「新たなデルタ株が見つかった」と発表しました。国内で新たに変異を獲得した可能性が極めて高いとみられています。
東京医科歯科大学ウイルス制御学分野・武内寛明准教授:「デルタ株にアルファ株の特徴が加わったと。いま、市中流行しているデルタ株よりも、より感染力が強くなる。もしくは、そういう可能性がある新規のデルタ変異株ではないか」

そこで、濃厚接触者にあたる人の検査を進めました。
東京医科歯科大学ウイルス制御学分野・武内寛明准教授:「ワクチン接種が1回の方と、2回接種し、ワクチン効果が基本的にできている方、そのお二方にも、実際にN501S変異を有する新たなデルタ変異株の感染事例が確認された」
感染が確認された濃厚接触者の1人は基礎疾患を持つ70代の男性で、7月にワクチン接種を終えていました。

東京医科歯科大学ウイルス制御学分野・武内寛明准教授:「少なくとも感染伝播性は、従来のデルタ株と同等、もしくは、それ以上の能力を有している可能性。密な状況を避け、やはりマスクをする。そういった気遣いをする必要がある。十分な医療を適切なタイミングで、適切な治療を受けることができる。そういう環境を整えるためにも、とにかく今の段階で、ウイルスに新たな変異をするチャンスを与えない」

海外から日本に入り込んでいた“新たな変異株”もあります。去年10月にインドで発見された“カッパ株”。今年6月、三重県は、カッパ株の感染者を発表しました。その後、国内では先週までに8例の報告がされています。

新たな変異株が、すでに主流となっている国もあります。コロンビアでは、今年1月に、国内で初めてミュー株の感染が確認されると、ミュー株の感染が瞬く間に広がっていきました。感染が急拡大した4月から6月には、コロナで亡くなった人の3分の2がミュー株に感染していました。

日本ではまだ2例ですが、ヨーロッパは警戒を強めています。
欧州医薬品庁・カバレリ氏:「ミュー株は免疫を回避する能力が高い可能性があり、特に注意が必要だ。ただし、ミュー株が急速に拡大していることを示すデータはまだ見ていない。デルタ株からミュー株に置きかわるかは不明だ」

◆感染症の専門医である大阪大学医学部の忽那賢志教授に聞きます。

東京都が16日に確認した新型コロナウイルスの新たな感染者は831人でした。また、大阪府は858でした。

(Q.新規感染者数が減少傾向ですが、要因についてどう見ていますか)
東京都は早くから緊急事態宣言が出されていましたが、あまり効果がみられませんでした。しかし、関東3県と大阪府の緊急事態宣言が出た8月上旬から実効再生産数は低下していました。16日のアドバイザリーボードの資料では、滞留人口はあまり変わっていませんが、人の移動率は減ってきていたというデータも出ていて、感染者の急増でリスクを避ける動きにつながったのではないかと思います。

WHO=世界保健機関が挙げている9つの変異株です。『VOC』と『VOI』に分かれています。より危険度の高い『VOC=懸念される変異株』には、現在、主流のデルタ株が、それよりも警戒度は下がりますが、感染例が多い『VOI=注目すべき変異株』には、ミュー株が含まれます。先月、国内でデルタ株にアルファ株の特徴も加わった“新たなデルタ株”も確認されています。

(Q.ミュー株と新たなデルタ株について、現時点でどこまでわかっているのでしょうか)
ミュー株については、まだわからないことばかりです。従来のウイルスより感染力や重症度が高くなるとの知見は、いまのところありません。アメリカでは、4月に初めて確認されました。一時的に増えた時期もありましたが、3カ月ほどで減少しています。現時点で、デルタ株に置き換わるほど、どんどん広がっていくという感じではないと思います。新たなデルタ株についても、従来のデルタ株と同様に感染性や重症度の増加、ワクチン効果の低下という特徴は同じで、さらに感染力が強くなっている可能性はあります。

先日、東京大学医科学研究所などのチームは、ミュー株に対するワクチンや感染によってできる中和抗体の効果が、ミュー株の場合、従来株の7分の1に落ちると発表しました。

(Q.ワクチンの効果が落ちて、ブレークスルー感染しやすくなるということでしょうか)
中和抗体の効果が落ちてくると、感染を予防する効果が落ちてくるという知見が増えています。ただ、重症化を防ぐという効果については、中和抗体だけではなく、リンパ球などの細胞性免疫の働きも重要になってきますので、中和抗体の効果が落ちたとしても、ワクチンに意味がないというわけではなく、重症化を防ぐ効果は保たれています。

(Q.今後も変異は、どんどん進んでいくのでしょうか)
感染者が増えれば、変異株が出てくる可能性は高くなります。最近、変異株は“免疫不全の人の間で生まれやすい”ともいわれています。流行が続けば、免疫不全の人のなかで、変異株が出てくる可能性があります。

(Q.抗体カクテルも効かなくなる可能性はあるのでしょうか)
可能性としてはあります。元々、アメリカで研究されていたモノクローナル抗体は、変異株の出現によって効果が落ちたので、承認が取り消されました。だから、今の抗体カクテルが効かなくなる可能性もあります。

(Q.議論になっているブースター接種の必要性については、どう考えますか)
16日に発表された研究では、イスラエルのブースター接種の効果について、2回のみの接種と比べて、感染予防効果が11倍、重症化の抑制が19.5倍。こうした結果を踏まえて、今後、国内でも検討が行われていくと思います。

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