後遺症“ブレインフォグ”治療法は?専門家に聞く[2021/09/21 23:30]

新型コロナウイルスの後遺症で、“ブレインフォグ”と呼ばれる症状を訴える人がいます。岐阜大学大学院教授で、脳神経内科学が専門の下畑享良先生に聞きます。

“ブレインフォグ”は、「脳に霧がかかった」と日本語で訳すように、記憶障害、集中力の低下や、精神的な疲労など、頭がもやっとしたような症状を総称しています。コロナ以前からあった言葉です。それが、コロナの後遺症の一つにあてはまると、最近、注目されています。

(Q.コロナに感染すると、なぜ、このような後遺症が出るのでしょうか)
コロナに感染すると、ウイルスと戦うためのタンパク質ができて、それが脳に入ると炎症を起こします。これによって脳の神経細胞がうまく働かなくなると考えられています。ウイルスそのものが脳に入るわけではなく、入ったタンパク質が炎症のスイッチを押すのではないかと推測されています。

(Q.脳の炎症が、ブレインフォグにつながっているということでしょうか)
研究者の間では、そのような見方がされていますが、まだわからないことが多いのが現状です。

国際的な医学誌で発表された軽症者を追跡調査したデータによりますと、味覚・嗅覚障害は、年代にかかわらず症状が出ているといいます。ブレインフォグとみられる記憶障害も、年齢が高くなるにつれてやや割合は高くなっていますが、若い人でも後遺症が出ているようです。

(Q.ブレインフォグは、軽症者、若い人でも出るということですね)
そうですね。入院しなかった軽症者や若い人でも後遺症は生じるということが報告されています。

(Q.ブレインフォグを含む後遺症に対する有効な治療法はあるのでしょうか)
残念ですが、治療については、まだ確立されたものはありません。しかし、イギリスの2度のワクチン接種で後遺症の頻度が半減するというデータはあります。恐らく、ブレインフォグも半減すると考えるのが妥当だと思いますが、明らかな根拠はありません。程度も軽くなるかは、わかっていません。やはり重要なことは感染しないこと。そのためにはワクチン接種が推奨されます。また、対処療法は、さまざまなクリニックで行われていると思いますが、まだエビデンス、医学的な根拠を伴った治療はないというのが現状だと思います。

(Q.後遺症は自然に治るということはあるのでしょうか)
味覚、嗅覚障害は、時間経過で治ることがわかっています。ただ、ブレインフォグや、記憶障害については、研究が進んでいないので、まだわからないという状況です。

(Q.後遺症治療に対して、今後、先生はどのようなことを望まれますか)
後遺症は、地震で例えると、遅れてやってくる津波のようなもので、社会や経済への影響は非常に大きいです。医療者はブレインフォグという病態があることを認識することが大切で、国は、ブレインフォグ研究を積極的に推進することが望まれると思います。コロナの後遺症は、非常に多彩で、しっかりした診断基準もできていない状況で、治療に対するガイドラインもこれからです。

こちらも読まれています