「産後うつ」増加・孤立化 行政がお弁当宅配で支援[2021/09/25 18:52]

 コロナ禍で女性の「産後うつ」が急増し深刻化しています。そうしたなか孤立するお母さんたちを支援するために新たな宅配サービスが始まりました。

 山城さん(仮名):「日中、夫もいない時は世の中に自分1人だけみたいな」

 東京・日野市で暮らす山城さん(37)。会社員の夫と保育園に通う長女の3人家族。2年前、長女を出産した直後、精神的に不安定に。

 山城さん(仮名):「ささいなことですごくイライラしたりとか、子どもの泣き声に慣れていないので、それがストレスに感じたり」

 現在、妊娠9カ月。コロナ禍での出産とあって、より一層、不安を感じています。

 山城さん(仮名):「(実家は)夫が北海道で私が沖縄。高齢なので両親も。気軽に『来て』とも言えない」

 これまで産後うつは、10人に1人が発症するとされていました。

 しかし、コロナ禍で生活のストレスが深刻になり、産後うつの可能性がある母親が、感染拡大前の2倍以上に増えたというのです。

 日野市子ども家庭支援センター・藤井美奈子係長(41):「ご近所のママ友さん同士で集まって、お互いに情報交換ができなくなり、お母さんたちの孤立が、コロナ禍で深刻な問題に」

 そうした現状を重く見た日野市では、5月から、ある宅配サービスを始めました。

 日野市子ども家庭支援センター・藤井美奈子係長:「配達員がお弁当を届けて、直接会話をして手渡しする形をとっているので、お母さんの疲れとか、産後うつの兆候を早めにキャッチできるんじゃないかと」

 それは、産後うつ対策として、福祉事業所などと始めた配食サービス。栄養士が考案したヘルシーな手作り弁当を産後2カ月以内のお母さんに届けてくれるのです。

 費用の半分以上を日野市が負担するため、配送料込みで1食500円。届けるのは、高齢者の見守りも行っている、経験豊富な配達員です。

 利用者の一人、5月に出産したばかりの吉川郷子さん(37)。育児に奮闘中の吉川さんにとって、ランチタイムは、唯一の心安らぐ時間。

 配食サービスを利用する吉川郷子さん:「本当においしいです。すごく助かってます。内容もよく考えて下さっているので」

 吉川さんも、外出自粛で両親や友人と会えない生活が続いています。

 配食サービスを利用する吉川郷子さん:「すごく寂しい。自由に会いたい人に会えない。だから(配達員と)ちょっとした会話ができるのはうれしい」

 出産後のお母さんを支援する日野市の配食サービスは、都内の自治体としては、初の試み。

 配食サービスを利用する・大久保明子さん(36)「自分に給食が配られているみたいで、献立表もあるので、勉強にもなるし、楽しみ」

 サービス開始からおよそ4カ月、問い合わせや利用者は確実に増えています。

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