予報士のつぶやき 台風16号 記録的暴風の恐れも[2021/09/28 14:45]

28日正午現在、台風16号は、「大型」、「非常に強い勢力」で日本の南をゆっくりと北上している。目を取り巻く雲は直径1500kmもあり、本州をすっぽりと覆うほどである。

今月23日に発生後、海面水温の高い海域を進んだことにより急発達。一時、最も上の勢力である「猛烈な」台風となった。27日午後には非常に強い勢力にダウンし、発達のピークを過ぎたように思いがちだが油断できない。

今回の勢力ダウンは、台風の動きが遅くなったことが関係している。台風がゆっくりと進んだことにより周辺の海水がかきまぜられ、海面水温が下がったことで一時的に勢力が落ちただけなのだ。

まだまだ広い範囲に海面水温30℃以上のエリアが広がっている。このあと北上を始めると再び発達し、30日には「猛烈な」台風に戻る見込み。その後はあまり勢力を落とさず、関東から伊豆諸島に接近してくる。

台風の勢力は中心付近の最大風速で定義づけられている。
最大風速が、
33m以上44m未満が「強い」
44m以上54m未満が「非常に強い」
54m以上が「猛烈な」
台風である。

28日正午時点の予想では、10月1日(金)には、「非常に強い」勢力で伊豆諸島付近を通過し、関東の沖合に進むとみられている。中心付近では実際に平均44mから54m、瞬間的にはこの1.5倍から2倍の風が吹くため、台風の中心が伊豆諸島の島々の真上を通れば、このレベルの暴風が実際に観測される恐れがある。

これまでに伊豆諸島で観測された最大瞬間風速を振り返ると、1975年10月5日、台風13号の接近・通過により、八丈島で観測された67.8mが1番の記録である。

八丈町によれば、この台風により2400棟以上の家屋が損壊。農業施設などへの被害額は55億4千万円を超える大災害となった。今回の台風も進路次第では同じレベルの暴風をもたらす恐れがある。

関東で記憶に新しい風の被害といえば、2019年の台風15号だろう。千葉県を中心に記録的な暴風となり、ゴルフ練習場の鉄柱や送電線鉄塔が倒壊するなど甚大な被害が発生した。この時ほどではないものの、関東でも沿岸部を中心に暴風が吹き荒れ、停電や断水などが発生する恐れがある。

台風の接近までまだ1日〜2日ある。懐中電灯や携帯電話のモバイルバッテリー、冷蔵が不要な非常食、水など、いざという時のための準備をお願いしたい。また、台風接近前には風呂の水を抜かずにためておくことも有効だ。

テレビ朝日気象デスク 藤枝知行

こちらも読まれています