「スタッフとイルカの絆に涙…」閉館の舞台裏に密着[2021/10/03 08:10]

神奈川県三浦市の水族館「京急油壺マリンパーク」が9月末で閉園しました。
拍手が鳴りやまなかった最後のイルカショー、その舞台裏を密着取材しました。

寂しさと。くやしさと。思いを押し殺して、スタッフが舞台に立ちます。
出番を待つアシカも…イルカも…。きょうでお別れです。
9月30日。最後のイルカショーの幕が上がりました。

神奈川県・三浦市の水族館「京急油壷マリンパーク」の、最後のイルカショーです。
舞台袖から心配そうに見守るのは、営業部長の金子和久さん。
「最後になりますので、悔いの残らないよう、お客様の心に残るような展示、パフォーマンスをみんなで力を合わせてやりたい」

金子さんの人生は、マリンパークとともにありました。
若い頃はイルカの担当でした。
高校を卒業した18歳の時から41年、ずっと、ここで働いてきました。
「私が入社してからずっとお世話になって、生活を支えてくれた場所でもあります」

マリンパークは、三浦半島の先端に、1968年にオープンしました。
当時、東洋一と言われたドーナツ型の大きな水槽が自慢でした。
そして、もうひとつの自慢がイルカショーの劇場「ファンタジアム」です。

金子営業部長「イルカ・アシカのパフォーマンスの施設としては屋内型というのは他にはない施設だったと思います」

しかし、施設の老朽化は進み、入場者は減少していました。
そこに、コロナが追い打ちをかけました。

金子営業部長「(去年は)いちばんお客様の多いゴールデンウィーク、営業できなかったのでですね、非常に厳しかったです」

そして、閉館が決まりました。
マリンパークは、魚の展示以外にも、地元にとって、大切な存在です。
閉館が発表された5月から、惜しむ声が、たくさん上がっていました。

閉館が迫る9月の初め、金子さんが特別に、水族館の裏側を案内してくれました。
「イルカもそれぞれよく見ると顔が違う」
「この2頭のイルカは入社が私とほぼ同じぐらい。41年ぐらい」
かつて金子さんが担当したこの2頭は、41年間、マリンパークの人気者です。

飼育員「とても寂しく思っています。いつもと同じショーを最終日も見せられるように頑張りたいと思っています」
金子営業部長「思いは一つだと思います。もうそれで終わりなのでですね…」
スタッフの頑張りで、生き物たちは、全国各地の水族館などが受け入れてくれることになりました。

9月30日 閉館の日。早朝から、たくさんの人が訪れました。
イルカショーはこの日は特別に5回、やることになりました。
来場者「イルカがジャンプするたびに涙して。スタッフさんと動物さん達の絆が、すごくもう…。」
「やっぱり込み上げてくるものがあって。受付から大泣きだったんですよ。チケットのいつものお姉さんと、もう大泣きだったんです」

そしてついに、イルカショー、最後の回になりました。
さあ、マリンパークを支えてきたあの2頭、フィンとジョイの出番です。

午後4時すぎ。すべての演目が終わりました。
イルカたちは、最後まで、精いっぱいのジャンプを続けていました。

幕が下りても、誰も帰ろうとしません。
会場には、拍手が、いつまでも鳴り響いていました。
楽しかった水族館の思い出を、心の中にずっと残してほしいと、金子さんは、願っています。

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