昭和のノーベル賞 初の生理学・医学賞 利根川進氏[2021/10/04 11:00]
1987年 生理学・医学賞 利根川進
「さらに多くの発見のために! 乾杯」
日本人で7人目のノーベル賞受賞者にして、初めて生理学・医学賞に輝いた利根川進さんです。
1987年当時、利根川さんはアメリカのマサチューセッツ工科大学の教授で、研究仲間らと研究室で祝杯をあげました。
利根川さんは、京都大学ウイルス研究所で「分子生物学」を学んだ後、アメリカやスイスに渡って免疫の研究を続けました。
そして、私たちの体がさまざまなウイルス・病原菌の種類1つ1つに合わせて抗体を作れるのは、遺伝子が変化しているためである、という事実を世界で初めて突き止めたのです。
「遺伝子は変化しない」とされてきた、それまでの常識を覆す論文を発表したのが1976年。
ノーベル賞受賞はその11年後、48歳の時でした。
利根川)抗体と病原菌との関係というのは、ちょうどカギと鍵穴の関係。
病原菌というのは種類が非常にたくさんあるわけです。
それぞれのカギに対してそれに合う鍵穴を用意しないと、病原菌が入ってきたってことが認識できない。
ですから、非常にたくさんの種類の抗体を作る能力を持っている。
たくさん作るのにどういう遺伝的な機構が使われているのかということを突き止めたのが我々の仕事。
そこで重要なことは、抗体遺伝子というのは、ほかの今まで知られていた遺伝子と違って、
その個体の一生の間でどんどんどん変わっていく。
変わっていくことによって非常に数多くの鍵穴を用意することができる」
研究室で利根川さんに聞きました。
研究の発想はどのように生まれるのでしょう。
記者) モノを考えるのはどこですか
利根川)どこということはないです。どこでも考えます
記者) 前にノーベル賞を取った福井(謙一)さんは寝ている時と言われますが。ひらめきというか
利根川)昔はそういうこともあったなあ。ははは。
同僚) そう言っておいた方がいいんじゃないですか。寝てる時にひらめきがあったと
利根川)いや、あまりひらめきないもんなあ。はははは
利根川さんはその後、脳科学の研究を続け、2015年、理化学研究所の脳科学総合研究センターのセンター長として脳細胞を光を当てて刺激することで、うつ病の症状を改善する治療法を発表しています。
利根川)「マウスの脳の細胞を人工的に操作することによって、うつ病のような状態を示しているマウスの症状を治した」
「役に立つかもしれないし、立たないかもしれない。今のままでは、そのままでは使えない」
「侵食性が低い、あるいはない方法が開発されれば、マウスで行われたことが人間のうつ病の患者にも効果的に使える時が来るかもしれない」