日本の原風景「棚田」守りたい 切り札はアイス!?[2021/10/09 18:30]
傾斜地に階段状に作られた田んぼ、棚田が今減り続けています。そんな日本の原風景の未来を守るカギは、子育てママが考案したアイスクリームでした。
目の前に広がる絶景、“日本の原風景”棚田です。
ここは、「葉山御用邸」があることで有名な、神奈川県三浦半島の葉山町。
“海の町”としても知られていますが、実は緑あふれる棚田が、江戸時代から続いています。
ここ葉山に魅せられ、都内から移住した女性がいます。山口冴希さん(35)。
6年前、夫の病気療養のため、自然豊かな葉山に家族5人で移住。
知り合いに誘われ、農業のボランティアに参加したことをきっかけに棚田に興味を持ち始めました。
都内から葉山に移住・山口冴希さん:「(移住前は)葉山は海があることくらいしか知らなくて。その後棚田があることを知って、とても美しかったので感動して」
しかし、専業主婦だった冴希さんは、農業の経験はゼロ。当初は地元のベテラン農家・片山さんに教えてもらいながらの手探り状態でした。
葉山棚田耕作隊・片山正徳さん(68):「一つずつの作業はちゃんとやってくれてるんだけど、『大丈夫かな…?』という心配はありました」
さらに、3人の子どもを育てながらの農作業は、「まさに悪戦苦闘の毎日だった」といいます。
都内から葉山に移住・山口冴希さん:「(当時)一番下の子(慎平君)がまだ1歳前だったので、おんぶしながらくわを振っていて、『どこの嫁だ?』と言われて」
それでも、懸命な努力と明るい人柄で、地元の人たちにも認められ、今では、棚田での米作りがやりがいある仕事に。
棚田は、斜面にあるため日照時間が長く、平地の水田と比べて風通しが良いため、害虫が発生しにくい、などのメリットがあります。
しかし、その一方で「手間が2倍、収穫量は半分」と言われ、その生産性の低さから、近年、姿を消しつつあるのです。
都内から葉山に移住・山口冴希さん:「大きい機械が入らないので、ほぼ手作業です」
このままでは、ますます棚田は衰退してしまう…。
そこで、冴希さんが思いついたのは、突拍子もないアイデアでした。
都内から葉山に移住・山口冴希さん:「ここのお米を甘酒にして、アイスを作っています」
もともと得意だった料理の腕を生かし、4年前、葉山の棚田で育てたお米で「アイスクリームを作る」と言い出したのです。
当然、農業の師匠である片山さんは…。
葉山棚田耕作隊・片山正徳さん:「『無理だろ』って」
ところが、冴希さんは…。
都内から葉山に移住・山口冴希さん:「『これはいける!』って思ったんですよね」
そして、開発におよそ1年かけて生まれたのが、その名も「葉山アイス」。
ココナッツミルクと豆乳を加えた甘酒アイスは、優しい味わいでヘルシー。
都内から葉山に移住・山口冴希さん:「お米を麹と合わせた甘酒で、この甘酒の甘みをいかして作ってるので(アイスは)砂糖控えめ」
お米のままではなく、アイスにして出荷する。子育てママの冴希さんならではの発想でした。
都内から葉山に移住・山口冴希さん:「葉山の棚田はとても収穫量が少ないので、アイスにすることでたくさんの人に棚田の魅力を知ってもらうきっかけになったらいいなと」
冴希さんが考案した葉山アイスは、地元のスーパーなどで売られていて、遠くから買いに来るお客さんもいるといいます。
HAYAMA STATION・関根良二さん:「暑い時期は在庫がなくなる状況もある。大量に買っていくお客さんもいる」
さらに、オンラインショップでも購入することができます。
美しい葉山の棚田を守りたい。移住して6年、冴希さんの挑戦は始まったばかりです。