“見えない軽石”で被害拡大…水面から「水中」へ[2021/11/21 22:30]

東京・伊豆諸島に到着しました。私たちのカメラは海を漂う軽石をとらえました。一方、沖縄では軽石が水中に沈み見えなくなったことで、新たな被害も起きています。

▽伊豆諸島 海上で「軽石」発見した船長「細かい方が危険」
軽石漂着への警戒が続く、東京・伊豆諸島。神津島から南西におよそ5kmの海上でした。
(小川麻子ディレクター)
「軽石の帯みたいのがあったので。見えますか、あそこに茶色い帯状のものがあります、軽石でしょうか。波に漂っています。」

海中から見ると、たくさんの粒が浮いていることがわかります。
さらに別の地点。式根島の南西におよそ3km行ったところでも―。
「式根島からわずかの距離なんですけれども、茶色い帯のような、軽石のようなものが、波の上にかなりの数が浮かんでいます。かなり大きいですね、ちょっとすくってみます。」
「少しすくっただけで、こんなに軽石がありますね。よく見ると黒い粒々があって沖縄で見つかったものとかなり似ています。かなりの量の軽石が式根島のわずかな距離の沖のほうで見つかりました。」 
取材に同行してくれた植松船長も不安を隠せません。
(釣り船「植長丸」 植松寿明船長)
「これがいくつあるか、この帯がね。」
Q. 島から結構近い?
「近いですね、近すぎですね。危険な状態かも分からないですね。」

これが、海に浮かんでいた軽石です。大きいものは、直径5cmもありました。
ただ、船にとっては、小さい軽石のほうが問題だと言います。
(植長丸 植松寿明船長)
「この細かい方が危険といえば危険ですね、これだと吸い込んじゃうので船の中に、そうするといろんな船の箇所、破損しちゃうんで」

すでに島へと漂着した軽石も、日に日に増えています。
(西野毅ディレクター)「こちらの砂浜にあるこの茶色い筋状のもの。きのう見た時はおよそ数10mだったんですが、一夜明けるとおよそ1kmにまで広がっていました。」
今後、軽石のさらなる大量漂着はあるのでしょうか。 
海洋研究開発機構のシミュレーションでは、この週末、まとまった量の軽石が伊豆諸島に近づくことが予測されています。

“空路なし”「軽石」で孤立の恐れも
伊豆諸島の中でも、軽石の影響が生活全般に及びかねないのが、人口約500人の式根島です。
飛行機やヘリコプターなど空路の定期便がないため、島民の移動や、食料、日用品の運搬をすべて船に頼っています。
軽石が大量に漂着して、船が動かせなくなれば、島は孤立することになります。

こちらの商店では、1週間分の食料品をストックしています。しかし、不安は拭えません。
(ファミリーストアみやとら 宮川央行店主)
「今回は本当にまったく予想ができないので、大量の軽石が漂着して、長い期間欠航であるとかそういうのが続くとさすがに食料品とかは底をつくのかなと思います。」
高齢化が進む、式根島。村営の診療所に医師は一人いますが、島内に薬局はありません。
高齢者の中には、薬が足りなくなることを心配する人も―。
(大沼亀雄さん 85歳)
「飲まなきゃ大変なことになるよ、痛くて眠れないし。」
Q. まだ残っていますか?大丈夫ですか?
「(残りは)12日か。」
夫の亀雄さんは、足を大怪我し、その後、がんを患い、今も多くの薬を飲み続けています。
(大沼美代子さん 78歳)
「診療所に行くでしょ。そこで診察受けて、そこで東京のほうへ注文してくれて、そこから今度送られてくるの。薬を。どうなるんだろう。もし船が来なくなっちゃったら…」
「大変なことになるよ。」

▽水面から沈み“見えない軽石”
3カ月前、海底火山「福徳岡ノ場」の噴火でできた軽石。現在、伊豆諸島に接近していますが、最初に軽石が漂着した沖縄では依然、被害が続いています。
来月5日までのシミュレーションを見てみると、沖縄本島・西側の軽石は、今後も沖縄を離れず、漂い続けることが分かります。
(海洋研究開発機構 美山透主任研究員)
「ここ(西側)が流れの陰みたいになるんですね。陰に入っちゃっているので動かないというのと、ちょうど北風があるので、その北風によっても押し付けられている形になっているので、西側にためられている」

軽石被害が長期化する沖縄。北西部にある今帰仁の港は、今月初め、びっしりと軽石に覆われていました。
潜ってみると…軽石が積もった海の中は真っ暗でした。あれから、2週間…港から軽石は消えていました。
一方、近くのマリーナでは…
(水中カメラマン 広部俊明さん)
「これ砂浜じゃないんですよ。ここボートのマリーナなんで…ボート浮いてますから…たぶんこの辺から水ですね。これ水なんですけど、まだ水の層にたどり着いてない感じですね。あ、やっと水の層にたどり着きました。ということは軽石積もっているのこの高さですね…」
港は30cmほどの厚みの軽石に覆われていました。
しかし、風向きや潮の流れで、景色が一変すると言います。
こちらは、同じ沖縄本島、西側の海です。上空から、軽石は確認できません。船からも軽石は見えません。しかし、潜ってみると…
船からは見えなかった軽石が、大量に水中を漂っていました。
この「見えない軽石」が今、被害を深刻化させています。
軽石を一つつかみ、手で握ると、簡単に二つに割れ、一つは浮き上がり、一つは沈んでいきました。
波に流されながら、ぶつかり合った軽石は、どんどん小さくなり、水を含んで、浮力を失います。こうした海中の軽石は、船からは確認できず、避けることが難しいと言います。
映像を改めて地元の漁師さんに見てもらうと…
(恩納村 海人 伊波司剛さん)
「ああああ、こういう感じ。これはやばいよ。これは船から見えんよ」
(湧川マリーナ 水中カメラマン 広部俊明さん)「細かい軽石でもボート(のエンジン)は吸っちゃう?」
(恩納村 海人 伊波司剛さん)
「吸っちゃいます。全部エンジンの中まで入ってこれが何らかで詰まった時にエンジンのトラブルになると、もう本当に走行不可能になって…」

すでに、船の被害は起きています。
(今帰仁漁港 漁師)「うちではもう20件余りの被害が出ていて、1件は自力で帰って来ることが出来なくて、知り合いの船に引っ張ってもらって帰ってきたっていう状況もあります。」
更に、今から最盛期を迎える「もずく」漁にも影響が出始めているといいます。
(恩納村 海人 伊波司剛さん)「もずくが伸びたときにポンプで収穫するので、軽石ごと吸ってもずくと混ざったら、選別、掃除するのが大変になってしまう。(軽石は)災害といっていいと思います。」

長期化が予想される沖縄の軽石被害。
(斉藤記者)「こちらの漁港の脇にあります、河口ではご覧のようにオイルフェンスを張り、再び軽石が海に流れ出ないようにせき止めた上で撤去作業が行われています。」
(恩納村漁業協同組合 金城治樹代表理事)
「この先一年で終わるのか半年で終わるのか、2年3年で終わるのか先が見えない状況ですので、我々のもずくあおさ等の養殖業には、当然その影響は最小限にするように漁師みんなで努力してやっていきたいなと思います。」

ダンプカーに積まれた軽石は…
しかし、ここはあくまでも仮置き場で、最終的にどうするのか、まだ決まっていません。軽石は、沖縄のあちこちで山積みされています。1カ月以上、日本近海を漂う軽石―。専門家は、今後、本州に到達する可能性も十分あり得ると警鐘を鳴らします。
(海洋研究開発機構 美山透主任研究員)
「いま黒潮に乗って来ているのは、比較的、黒潮の南側に乗って来ているんですね。ただ今後、沖縄から来るやつは黒潮の真ん中に乗って来ると思うので、もっと北を流れてくる」
軽石を運んでいる「黒潮」は、幅が100km程。現在、軽石は「黒潮」の南側に乗って運ばれているため、伊豆諸島に到達しています。美山氏によると、今後は、沖縄の西側に溜まった軽石が、黒潮の中央部に乗るため、本州まで流れ着く可能性があるというのです。
(海洋研究開発機構 美山透主任研究員)
「今よりも本州に近いところに流れる可能性が十分にあります。東海から関東にかけて(到達する)可能性がある。今週でおしまいという話では全然ないですね。」


11月21日『サンデーステーション』より

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