オミクロン株 感染力は?対策は?忽那賢志教授解説[2021/11/29 23:30]

南アフリカで見つかった新型コロナの新たな変異株『オミクロン株』は、これまでにヨーロッパや北米など15の国と地域で確認されています。

世界中で警戒が高まっていますが、ヨーロッパでは海外への渡航歴がない人からも感染者が出ていて、すでに市中感染が起きている可能性もあります。

WHO(世界保健機関)が28日に発表したオミクロン株の内容です。

感染力 … 感染者は増加しているが、感染力が高いかは分析中。
症状  … 「ほかの変異株と違う症状」の情報なし。ただ、重症化しにくい若年層が感染。
重症化 … 南アフリカでは入院率が上昇。ただ、感染者の増加が原因の可能性。
再感染 … 他の変異株より高い可能性。
ワクチン… 重症化予防に引き続き有効。

感染制御学が専門の大阪大学・忽那賢志教授に聞きます。

(Q.オミクロン株の感染力について、どう見ていますか)

忽那賢志教授:「デルタ株が広がっている地域のなかでオミクロン株が広がっているということは、デルタ株よりも感染力が強い可能性があります。ただ、感染者のなかでウイルスの遺伝子配列まで調べられている割合は一部です。特定のクラスターにかたよっている可能性もあるので、現時点では、デルタ株より感染力が強いか結論付けることはできません」

(Q.重症化の恐れは大きいですか)

忽那賢志教授:「今のところ分かっていません。これまでの変異株は、感染力が強いため、感染者の急増を招きやすく、医療体制のひっ迫を起こしやすいので、重症者が増えているように見えやすいです。変異株そのものの病原性の評価は難しいというのが実状です」

(Q.再感染の力が強いという点についてはどうですか)

忽那賢志教授:「過去に感染した人は、コロナに対する免疫を持っていて、しばらくは感染しにくいということが分かっています。ただ、変異株では、過去にできた免疫から逃れて感染していまう『免疫逃避』が起こることがあります。今回のオミクロン株でもスパイクの変化がたくさんあるということで、抗体が作用しにくくなる免疫逃避が起こる可能性があります」


各メーカーはワクチンの対応を急いでいます。

ビオンテック社(ファイザーと共同開発):「必要であれば、新たなワクチンを6週間以内に製造、100日以内に出荷可能」

モデルナ社:「対応できるワクチンを、来年の早い時期にも供給できる」


(Q.日本では、これから3回目のワクチン接種が始まりますが、どう考えればいいですか)

忽那賢志教授:「一般論として、感染予防効果は、他の変異株でも効果が落ちると言われていますが、今主流のデルタ株を含めて、重症化を防ぐ効果は保たれていると言われています。今後、オミクロン株で、ワクチンの感染予防効果が落ちることが分かったとしても、ワクチン接種が感染対策として重要であることには変わりないと思います。オミクロン株に対応したワクチンが今後、開発されるかもしれませんが、現時点ではそれがいつ接種できるようになるかは分かりません。それを待つよりは、現時点でできる最善の予防策として、今あるワクチンをブースター接種することが重要だと思います」

(Q.世界中でワクチン格差が大きければ大きいほど、新たな変異株を生む可能性があるとすると、格差の問題はよく見ていかなければいけませんね)

このパンデミックにおいて、ワクチン接種は先進国から広がっていて、南アフリカの接種率は30%以下にとどまっています。この感染症は一般的に、感染者が増えるほど変異株が発生しやすくなると言われています。先進国だけで感染を抑えようとしても、接種率の低いところで抑えられないと、今回のように新たな変異株が世界中で広まってしまいます。先進国だけではなく、世界全体でワクチン接種率を高めて行く必要があります。そうした仕組みづくりが必要だということが、オミクロン株の出現で分かったのではないかと思います」

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