“国境の島”が水没危機…日本最南端・沖ノ鳥島の今[2021/12/12 22:30]

日本最南端の島・沖ノ鳥島。小さいながら日本にとって非常に重要なこの島が今、水没の危機に瀕しています。島の可能性を探る16年ぶりの大規模調査に同行しました。

▽最南端「沖ノ鳥島」16年ぶり大規模調査
目指すは、日本最南端の島・沖ノ鳥島。今回は東海大学と東京都が共同で行う、16年ぶりの大規模調査になります。

沖ノ鳥島があるのは、東京都心から南におよそ1700km。島は周囲10kmほどのサンゴ礁でできていて、海面上に出ている2つの小島は、周囲を護岸で囲まれています。
沖ノ鳥島は、国土面積を上回るおよそ40万平方kmもの排他的経済水域を持つ、重要な国境の島です

(松本拓也記者)
「沖ノ鳥島周辺に近づく船をチェックしているんでしょうか。今、海上保安庁の航空機が周囲を飛んでいます。」
近年、沖ノ鳥島周辺の排他的経済水域内で、中国の調査船が無断で海洋調査していたことが何度も確認されています。
今回の大規模調査の目的について、東海大学の山田教授は―
(東海大学海洋学部 山田吉彦教授)
「諸外国、色々クレームをつけてきていますが、この沖ノ鳥島がしっかりと活用できている、活用されるという姿を伝えることによりまして、日本が広大な海洋権益を確保、維持することができると」
荒波の先に現れたのは―
(松本拓也記者)
「出港してから4日、日本最南端の沖ノ鳥島にようやく到着しました。海面から少し出ている、こちらの島が北小島です。」

今回の調査には、新たな技術も導入されました。「環境DNA」です。
海水には、魚などのDNAが溶け出していて、それをフィルターでろ過して、回収していきます。
(東海大学 海洋学部 石川智士教授)
「この真っ白なのが、色んなものがたまっていくと色が付いていく。」
「今流行りのPCRの手法で増やしてあげて、データベースに照合することで、ここにどんな魚がいるのかを解明しようという研究です。」
さらに、海底の地形を調べるため、「マルチナロービーム」という最新の機材も使われました。
(東海大学 海洋学部 馬場久紀准教授)
「(以前の)20倍以上の精度が得られている。細かな凹凸の様子がはっきりわかる。色々資源があるのではないかとか、大事なデータになる」

▽波に削られ…“消滅の危機”も
国土を維持する上で重要な沖ノ鳥島ですが、激しい波による“消滅の危機”にさらされていた時代もあります。
これは護岸工事が行われる前、1988年に取材した際の映像です。
(渡辺宜嗣)
「大きさが縦が4mくらいです。横が2mくらい。波がこの上を通過していきます。しかし、水面から高さ40〜50cmくらいは海面上に出ています。海上保安庁の印があります。紛れもなく、ここは日本の領土です。」

海中のうねりも激しく、波に削られたのでしょうか、細くくびれたような形になっているのが見て取れます。
国は、波から2つの小島を守るため、ヘリコプターで消波ブロックを次々と海に投下。さらにコンクリートも使って、島の周囲を覆いました。
2005年の取材の際には、小島は護岸にしっかりと守られ、波に浸食されるようなことはありません。しかし―
(中村伊織記者)
「きょうの満潮時にはここまで水が来ていたということで、温暖化などの影響で、さらに海面が上昇すれば島全体が水没してしまうのでないかという懸念が持たれています。」

迫りくる“水没の危機”。それは地球温暖化が引き起こす「海面上昇」によるものです。
(東京大学大学院 茅根創教授)
「2つの島が、高潮位からわずか数10cmしか上に出ていませんので、今世紀の海面上昇が最大1mと言われていますので、これが水没してしまう危機にある」
沖ノ鳥島について、中国は「島」ではなく、単なる「岩」だと主張し、排他的経済水域の設定に異議を唱えています。
もし水没となれば「島」である根拠が失われかねず、日本から広大な排他的経済水域が消える恐れもあります。

沖縄県・久米島。この島の研究施設で、国のあるプロジェクトが進められています。
(水産土木建設技術センター サンゴ増殖研究所 中村良太所長)
「沖ノ鳥島から回収して久米島の方にもってきたサンゴになります」
沖ノ鳥島を水没から救う“切り札”は…“サンゴ”です。
もともと沖ノ鳥島は沈んだ火山島の上に厚さ1500mものサンゴが積み重なってできた島です。ここでの研究は、沖ノ鳥島のサンゴを産卵・増殖させて、また沖ノ鳥島に戻し、島の成長を手助けしようというものです。
サンゴの力は、“水没の危機”は乗り切ることができるのでしょうか。
(東京大学大学院理学系研究科 茅根創教授)
「サンゴは健全であれば(海面上昇に)追い付いていくだけのポテンシャルを持っていますので、サンゴを増やしてやることによって、海面上昇に対してきちんとサンゴ礁が追いついて、あるいは島がより大きくなる、そういう事を目指しています」
茅根教授によると、沖ノ鳥島のサンゴ礁に、沖縄で育てたサンゴを移植することで、サンゴ礁は100年に30〜50cm、上へと成長。さらに壊れたサンゴのかけらが、波に流されて、積み上がり、1m〜2mのサンゴ礁州島という島ができ、100年後に、海面が1m上昇しても、島は水没を避けられる可能性があると言うのです。久米島の研究施設では、今年も無事にサンゴの産卵を迎えることができました。

(水産土木建設技術センター サンゴ増殖研究所 中村良太所長)
「今年もちゃんと産んでくれてよかったなと。子供たちが沖ノ鳥島に将来戻って、沖ノ鳥島のサンゴを増やせるような活躍をして欲しいなと思います」


12月12日『サンデーステーション』より

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