家族と離れ療養も…増え続ける後遺症患者の“現実”[2021/12/15 23:30]

新型コロナの後遺症患者の数は増え続けています。感染後に苦しむ後遺症の現実について、取材しました。

小梶貴行さん(40)は7月下旬、新型コロナに感染しました。宿泊療養を終えて4カ月以上経っていますが、後遺症に苦しんでいます。

小梶貴行さん:「嗅覚なのか味覚なのか、分からなくなってきた。完全には戻ってない。どうしても味を濃く作っちゃうので、気を付けて薄めに作るようにしている」

小梶さんは感染前に、飲食店の従業員として報道ステーションの取材に応じていました。しかし感染後、味覚・嗅覚の異常やけん怠感、うつ症状などの後遺症に悩まされ、先月、退職しました。

静かな環境で回復を目指すため、妻と6歳の息子を東京都内に残して、群馬県長野原町での生活を始めました。

小梶貴行さん:「(Q.いつもお子さんの写真を見ながらご飯を食べる)毎週日曜日は子どもと必ずどこかに出かけて、朝からずっと。それだけが本当に楽しみで、仕事も頑張れていた。(Q.(薬は)食前食後で何種類ですか)今、食前2種類。忘れちゃうんで、いつも書いて貼ってる。コロナになってしばらくしてから、ちょっとしたことが忘れやすくなって、あれーっていうのが急に増えたので、仕事にならないし、周りにも迷惑かけちゃうから。これがコロナの後遺症なのか、それに対して何をすればいいのか、薬を飲んだらいいのか、それこそ何科の病院に行けばいいのか全然分からない。治し方も治るかどうかも分からない」

耳鼻科や心療内科など、いくつもの病院に通いましたが、症状が治まることはありませんでした。

小梶貴行さん:「(Q.味覚・嗅覚というのは大きいですよね、飲食をやっていて)入りたてのスタッフに料理を教えたりとか『味付け濃い』とか『これが足りない』と教える立場だったが、そういうのが全くできなくなった。それこそ、収入どうなるんだろう。家族もいるので不安しかなかった」

何よりつらかったのは、家族に苦しむ姿を見せてしまうことだったといいます。

小梶貴行さん:「家で一緒に暮らして、ずっとベッドにお父さんがいる、そういう姿を見せたくなかったので、ちょっとずつ自分のペースで、自分にしかやれないことを取り戻していかなきゃと。また目標を設定し直して頑張ろうかなと」

感染から6カ月経っても、約1割の人に何らかの症状が残っているという調査結果もあります。その治療の現場は今も“ひっ迫”した状況が続いています。

去年3月から後遺症患者を診ている『ヒラハタクリニック』。感染時の症状が軽かった若い世代の患者が多いといいます。

8月に感染した大学生:「手と足にちょっと力が入りづらい。自分自身が軽く考えていて、こんなに続くとは思わなかった」

現在、一日の患者は約180人。予約は2カ月待ちの状態が続いています。

ヒラハタクリニック・平畑光一院長:「ほとんど災害医療みたいな感じ。非常にひっ迫した状況が続いている。いまだに第一波の時の後遺症患者もたくさん来る。後遺症はなかなか治らないことも多い病気。(患者の数は)山にならない。階段状に上がっていく一方」

厚生労働省は今月初め、後遺症の症状や治療法をまとめた『診療の手引き』を発行しました。しかし「不明な点が多い」などの言葉が目立ちます。

ヒラハタクリニック・平畑光一院長:「なんで後遺症になるのかということすら、確定できていない。まだ後遺症というのは、原因も治療も未発達のジャンル」

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