予報士のつぶやき 「関東の大雪 今昔物語」[2022/01/05 13:30]

6日は太平洋上を南岸低気圧が東へと進んでくる。
南岸低気圧は関東で雪を降らせる代表的な低気圧。
ただ今回、この低気圧は関東の陸地からは離れて進む予想。

実は南岸低気圧と陸地との間に“小さな低気圧”ができる予想で
この小さな低気圧の降水域が関東の陸地にかかるかどうか、という感じが予想の本線。

降ったとしても降水量が少なく、まず大雪になることはない。
降るエリアも千葉や神奈川が中心。
都心はそもそも何も降らないかもしれないが、降れば雪のまま落ちてくるのかな。

ということで6日の関東は雪の可能性はあるものの基本的に影響なし。
ただ、降った場合は7日の朝、路面凍結には念のため注意してほしい。

今から16年前、今回のような南岸低気圧の北側に小さな低気圧が発生し
関東で大雪になったことがある。2006年1月21日、都心で9cmの積雪を観測。

この前日20日の朝、筆者は当時TBS朝番組の天気チームで働いていて、
出演者の予報士と翌日の雪に関して「雪はほとんど降らないね」という見解で一致。
放送の中でも、あすは南岸低気圧が東へと進んでくるが関東の陸地からは離れて進むので
雪はほとんど降らない、というニュアンスで伝えていたのだ。つまり「予想大外し」

なんで雪の予想を大外ししたのか。当時、気象予報士がどんな資料で予想していたかというと、
FAXで送られてくる午前9時と午後9時の12時間ごとの予想天気図
(簡単に言うと、地上と上空1500m、3000m、5500m付近の天気図)を元に、
雨が降るのか、雪が降るのか何時ごろから降るのか、を予想していた。

CGで見せられる雨予想や雪予想もまだなく、12時間刻みの天気図で気圧配置を読み
予想していたのだ。今は1時間ごとの気圧配置が3日〜4日後まで確認できるし、
上空の気温も細かく情報が手に入る。当然、雨予想や雪予想も参考にするし、
海外の気象モデルの予想も見て総合的に雪が降るかどうか、どのくらい降るのかを
判断できる。

16年前では小さな低気圧が発生する可能性を見つけるのも難しかったし、
仮に見つけられたとしても24時間以上前の段階ではどれくらい降るのか、
正直よくわからなかった。

現在では「雪の降る量」に関しても気象庁が情報を出す前に
気象予報士はコンピュータの予想を事前に把握している。
コンピュータが出した予想が妥当かどうか、予想以上なのか、予想以下なのか
そういう所を考えている。

ここ10年で様々な気象データを見ることが出来るようになり、
関東の雪の予想は難しいとはいえ、以前と比べれば、だいぶ予想しやすくなった。
その分、“外せない”という気持ちは以前よりもかなり強くなっている。

テレビ朝日気象デスク 太谷智一

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