デブリ取り出しの“実態”…「30年で廃炉」は正しい工程(ロードマップ)か[2022/01/19 22:34]

 国際廃炉研究開発機構、通称「アイリッド」と「三菱重工業」は18日、今年12月までに始めたいとしている福島第一原発2号機の燃料デブリの試験取り出しに使用するロボットアームを公開した。

 アイリッドと三菱重工業、そしてイギリスの核関連企業が共同開発したもので、最大で長さ22メートル、重さは4.6トンある。

 伸縮可能なアームを格納容器底部に制御棒交換のために開けてある穴に差し込み、格納容器の底に溶け落ちて堆積した燃料デブリ(以下『デブリ』)を採取すること目指している。

 イギリスでの新型コロナウイルスの感染拡大の影響で開始時期は1年程度遅れるらしいが、神戸市の三菱重工業神戸造船所での動作試験もあらかた終了した。

 アイリッドは近々、福島県楢葉町の施設で実物大の模型を使った試験(モックアップ試験)を行い、早ければ今年12月までに2号機に投入したいとしている。

 問題は、そのデブリ取り出し能力だ。アイリッドなどによると、アームの先端についた金ブラシでデブリをこすり取ったり、吸引機で水中のデブリを水ごと吸い上げたりできるというが、試験取り出しで想定される採取量はわずか1グラム。

 三菱重工業の担当者は「このロボットアームで持ち上げられるデブリの量は最大10キログラム」「今後は、20キログラム、30キログラムと持ち上げる量を増やしたい」と話している。

 しかし、アイリッド自体が試算した1号機から3号機までのデブリの総量は880トンもある。

 メンテナンスや故障など一切を度外視し、1年間休まずに作業を続けたとしても、一日10キログラム取り出しで241年、20キログラムで121年、そして30キログラム取り出せたとしても80年かかる計算になる。

 しかも、スムーズに進むという保証はない。

 2017年2月の2号機格納容器内部調査では、投入された通称「サソリ型ロボット」が投入直後に堆積物に乗り上げ、機能を喪失した。

 また、今月12日に開始予定だった1号機の格納容器内部調査では、複数あるロボットのうち最初に投入する予定だった水中ロボットでいきなり不具合が発覚し、調査は始まる前に中断している。

 別に失敗をあげつらうつもりはない。しかし、今後もデブリに関するロボット調査や取り出しは試行錯誤の連続となるだろう。デブリ20キログラム、30キログラムの取り出しも実態は「今後の目標」というのが現状だ。

 不思議なのは、それでも政府と東京電力が、廃炉まで「30年から40年」の旗印を降ろさないことだ。

 福島第一原発事故からもう10年が過ぎた。だから、廃炉まであと20年から30年である。

 停滞しているのはデブリ取り出しだけではない。

 使用済み燃料の取り出し開始時期も自民党政権下で初めて策定された2013年6月の「廃炉ロードマップ」に比べ、1号機で10年以上、2号機も7年から10年遅れでスタートすることを「目標にしている」。

 使用済み燃料ですら取り出しが大幅に遅れているのだ。

 しかもデブリを効率よく大量に取り出す技術が確立していないなかで、いつまで「廃炉まであと20年から30年」と言い張るのだろうか。今後の政府と東電の動向に注目したい。

社会部・吉野実

画像提供:IRID・三菱重工業

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