「できれば検査したい」検査なし“みなし陽性”実態[2022/02/06 22:30]

新型コロナの検査体制が逼迫する中、始まった「みなし陽性」の運用。番組では、検査なしで陽性となった人に話を聞きました。一方、感染拡大の影響は漁業にも…。冬の味覚に異変が起きています

▽コロナで行き場失う高級魚
(佐々木一真アナウンサー)
「いま網が引き上げられています!うわぁ大きな魚!田中さんこれは?」
「ヒラメです」
次々に引き上げられる、相模湾・冬の味覚―。
網を引くのは、相模湾に魅せられ、漁師となった田中雄太さん。
「ひときわ大きな魚が引き上げられました」
「アンコウです」
「アンコウと言えば高級魚ですもんね」
「美味しいですよ」
今日の水揚げは、ヒラメやアンコウなどの高級魚、およそ30kg。この時期としては大漁です。しかし、素直に喜べない事情が…。
(田中雄太 船長)「例年だと1kg800円くらいなんですよ。今これだと450円とか400円ぐらいですよね。(時短営業などで)民宿とかで需要が無くなっちゃったから、どうしても行き場がない感じですよね」
「まん延防止措置」で、休業や時短営業する飲食店が増え、行き場を失い、価格が暴落した高級魚―。さらに原油高も追い打ちをかけていますが、田中さんは、漁に出るしかないと言います。
(田中雄太 船長)「(漁をしないと)収入がゼロだから、なにかしらやって安くても良いから買い取ってもらえれば、それで回していくしかないですよね。子ども2人いて、頑張らないといけないから」
Q.子どもたちのためにも?
「そうね、ランドセル買えなくなっちゃうから頑張らないとね」

▽“みなし陽性”診断の現場
東京の「まん延防止等重点措置」の期限は残り1週間ですが…
6日の新規感染者は、17526人。この内、526人は、検査を受けず医師の判断でコロナと診断された「みなし陽性患者」です。重症者は、前の日より1人増えて45人、病床使用率は、55.3%でした。
オミクロン株の特性を踏まえた新たな基準の「重症者用病床使用率」は、19.3%。都は30%〜40%に達した場合や7日間平均が2万4000人を超えた場合、国に「緊急事態宣言」の要請を検討するとしています。
(東京都 小池百合子知事)
「リスクの高い高齢者の比率がきょう、9%を超えておりまして、いかに高齢者を守っていくか、命に直結しますので、そこに重点を置き対応していきます。」
全国の感染者は、8万人を超え、茨城と福井では、過去最多となりました。

▽検査なし“みなし陽性者”実態
発熱外来を担う都内のクリニックは、逼迫しています。
この日の患者は25人。最近、子どもと高齢者が増えてきたといいます。
(西田医院 西田伸一院長)「感染が小児、高齢者に拡大してくるとまた違う局面も出てくるので、さらに地域医療にかかる負荷というのは大きくなってくると思います」
こちらのクリニックでは、「発熱外来」に「一般診療」、そして「ワクチン接種」、さらに「感染者の健康観察」も行っています。
(西田医院 西田伸一院長)「患者数が増えていますので、5波と違った意味での忙しさっていうのがあります。いろいろ合わせてやっていかなければいけないという事でかなり負担は増えています」
拡充が求められている“発熱外来”。内科のある医療機関は、全国におよそ7万施設。しかし、発熱外来があるのはおよそ3万5000施設で、半数の医療機関は、コロナに関わっていないことになります。
(西田医院 西田伸一院長)「(都市部は)診療所自体がビルの一室を借りて行っている。そういう形態が非常に多いので、PCR検査をそう容易には行えないっていう事情もあります。出来る医師が出来るだけ参加してやるって事だと思います」
医療と検査体制の逼迫を解消するため、検査をせず、医師の判断でコロナの診断をする“みなし陽性”の運用が始まりました。このクリニックでもこれまでに2件、“みなし陽性”の診断を出したといいます。
(西田医院 西田伸一院長)「家族内感染の場合は(両親が陽性で)お子さんを医療機関に誰も連れて行くことが出来ないというときに、今まで我々が往診をして、お子さんの検体を取るって事をしていましたけど、今後はみなし陽性という形で診断できますので、非常に我々にとってもそれはありがたいし、患者さんにとっても余計な手間が省けるということになるかと思いますね」

神奈川県に住むAさん。3日前に“みなし陽性“と診断されました。
(みなし陽性者 Aさん)「だいたい38℃から39℃くらいを行ったり来たりしていた。熱がきのうまで4日続いた形ですね。」
Aさん一家は、3人の子どもがいる5人家族。最初に体調を崩したのは、長女、PCR検査で陽性でした。同じタイミングで、Aさんも発熱したため、検査を受けようとしますが…
(Aさん)「熱が出て(検査を)受けられるかなと思って電話したらちょっと厳しいと…」
そして2日間、病院を探し、ようやく…
(Aさん)「娘が診断受けた病院に電話したら、今だったら診れますということで、私は一応PCR検査を希望したんです。近親者とかに陽性者判定出てたら、PCRはしませんってことでみなし陽性となった…」
Aさんの妻もその後、39℃の高熱が出たため、同じ病院で“みなし陽性”と診断されました。
(Aさん)「勝手に治ってしまってコロナにかかった事を何も証明されないのは怖いですよね。PCR(検査)できるなら、した方が良いと思います。安心感が全然違うじゃないですか」

▽連日“ほぼ満床”限界近づく病院も
コロナの重症・中等症患者を受け入れている日大板橋病院では、すでに限界が近づいています。
(佐々木一真アナウンサー)
「東京都の発表ではコロナ病床にまだ半分近く空きがある状況なんですが、都内にあるこちらの病院はすでに満床状態で、その多くを高齢者が占めているといいます」
(日本大学医学部付属板橋病院 高山忠輝 病院長補佐)
「コロナ病床、ほぼ満床の日は連日続いております。最近では60代70代、非常に高齢化の状況が続いている。高齢者が入院しますと、やはり一定の割合で重症者がでてきてると。その分入院期間がより長くなってしまう」
コロナ病床60床のうち、およそ7割が高齢者。寝たきりの患者も多く、さらなる負担がかかっているといいます。
(日本大学医学部付属板橋病院 高山忠輝 病院長補佐)
「2倍3倍の人手をかけてですね、患者さんをケアしてるという状況」
この病院は、コロナ以外でも都内で4つしかない子どもの重篤患者への救命救急も担っています。
(佐々木一真アナウンサー)「また今一台救急車が到着しました。続々と病院に救急車が到着しています」
一般病床もほぼ満床が続く中、スタッフ90人が出勤できない状態(4日時点)となり、入院制限も考え始めているといいます。
この状況で、東京都が「緊急事態宣言」の基準を変更したことに、疑問を呈しています。
(日本大学医学部付属板橋病院 高山忠輝 病院長補佐)
「(元々の方針である病床使用率)50%を超えたら緊急事態宣言を発出する、それで良かったんじゃないかなと感じています。現場でやってる者にしてみれば、もう満床の状態があるので、もうちょっと(“宣言”発出が)早かったら良かったなと感じております。」

▽“ピークアウト”沖縄の医療現場は今
一方、いち早く感染拡大し、ピークアウトした沖縄。6日の新規感染者は、511人。先月15日をピークに減少傾向にありますが、入院者数は逆に、感染のピーク時から増えています。
軽症・中等症の患者を中心に受け入れている沖縄の友愛医療センター。
先月中旬以降、高齢者の入院患者が病床の大半を占めるようになりました。
(友愛医療センター コロナ担当医師)「ほとんどが高齢者の入院にシフトしている現状かなって思っています。患者さん1人1人に対する負担は増えてきています。」
沖縄では、感染者のピークだった先月15日、70歳以上の割合は、全体の4.1%でしたが、5日の時点では、9.2%と高齢者の割合が増えています。
(友愛医療センター コロナ担当医師)「例えばお食事の時、1人の患者さんに対して1人の看護師さんがとられてしまったりとか、もちろんオムツ交換だったりとか入浴もサポートが必要になってきます」
さらに高齢患者の多くは、脳梗塞など基礎疾患があったり、合併症を引き起こすリスクもあり、余談を許さないといいます。
(友愛医療センター コロナ担当医師)「第5波の時はですね、完全にコロナ病棟は呼吸器の病棟だったんですけど、今はですね。コロナ病棟はいわゆる高齢者が入院する総合病棟みたいな感じで…」
さらなる感染拡大を防ぐため、希望する高齢者施設を巡回し、3回目のワクチン接種を行っています。
(友愛医療センター コロナ担当医師)「重症化しない、またかかりにくい体を作る意味では、3回目接種は速やかにやるべきなのかなと考えています。」


2月6日『サンデーステーション』より

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