地下鉄サリン事件で夫を娘を奪われ…遺族の27年 今語る悲しみの対面[2022/03/19 13:54]

 地下鉄サリン事件から27年、支えあって生きてきた2人の遺族を追いました。

 「地下鉄サリン事件」で夫を亡くした、高橋シズヱさん(75)です。

 事件から27年…。高橋さんは、遺族らの証言をインターネット上で発信しようと、この日、事件で長女を亡くした岩田キヨエさん(83)の元を訪ねました。

 夫を亡くした・高橋シズヱさん:「30年近く経って一番最初に思い出すことは?」

 長女を亡くした・岩田キヨエさん:「朝、元気で出ていった孝子が『なんで死ぬんだろう』って。それが、よく分からなかった。なんで孝子が死んだんだろうって」

 東京の地下鉄5つの路線で、猛毒のサリンが一斉にまかれた「地下鉄サリン事件」。

 「オウム真理教」の幹部らによる犯行で、14人が死亡し、被害者はおよそ6300人に上りました。

 出勤途中で亡くなった、岩田さんの長女・孝子さん(当時33)。あまりにも突然すぎる、悲しみの対面でした。

 長女を亡くした・岩田キヨエさん:「係の人(警察官)が『孝子さんです』って、パッと(棺の)ふたを開けた時に『えー』と思ったんですよ。触ろうとしたら、触れないんですね。(中に)ビニールが貼ってあって『サリンが残っているかもしれないから、じかに触れない』って言われたんですよ」

 孝子さんが愛用していたスキューバダイビングのスーツが、今も部屋に飾られていました。

 長女を亡くした・岩田キヨエさん:「朝、起きると、ここへ向かって『お姉ちゃん、おはよう』って言うんです。これに顔を付ければ孝子なんです」

 暴走した教団に突然、奪われた幸せな日常。悲しみに暮れる岩田さんに対し、心ない言葉もあったといいます。

 長女を亡くした岩田キヨエさん:「『ああやって(娘が)殺されても仕事に来ている』って『頭がおかしい』とかいう人いました。え、私、仕事に来ちゃいけないのかなと思ったんですよね」

 傷付いた心を支え続けてくれた夫も、14年前に他界。

 長女を亡くした・岩田キヨエさん:「高橋さんに色んなことを教えて頂きましたし、助けて頂きました」

 夫を亡くした高橋シズヱさん:「語れるのは、私たち(遺族)しかいない。それが活動にも反映されてきちゃいますよね」

 事件を指示した、松本智津夫元死刑囚ら、元幹部13人は、4年前に死刑が執行されました。

 しかし、オウム真理教から名前を変えた「アレフ」、分派した「ひかりの輪」「山田らの集団」は、今も活動を続けています。

 岩田さんは、「メディアの取材はこれを最後にしたい」としたうえで、若い人たちに絶対に教団に入らないでほしいと、強く訴えます。

 長女を亡くした・岩田キヨエさん:「孝子が死んだのが、まだ納得いかなくて。なんで、オウムは普通の人を殺すんですか。絶対にオウムには入らないで下さい。オウムにはなくなってほしい。この世から」

こちらも読まれています