意外と身近にいる!?スパイの手口公開〜偶然装い…、ヘッドハンティングも[2022/03/19 20:50]

 「偶然を装って町で声掛け」「SNSでヘッドハンティング」など、日本の研究者らから機密情報を盗み出すスパイの具体的な手口を警視庁が明かしました。

 警視庁公安部の宮沢忠孝部長は11日、高度な技術などの機密情報を有する企業に対するオンラインセミナーで実際のスパイの手口を紹介して注意を呼び掛けました。

 『現実空間でのスパイ活動』
 (1)「この辺においしいお店ありませんか?」−仕事帰りの通信会社部長を狙い撃ち−
 2020年1月、警視庁公安部は機密情報をロシア人に渡したとして、通信会社部長の男を逮捕しました。
 捜査関係者によりますと、部長の男は2017年春、仕事が終わって会社を出た直後に「この辺においしいお店ありませんか?」と見知らぬ男性に声を掛けられました。
 これがスパイとの最初の出会いでした。初めは調べれば簡単にわかる程度の情報だったものが、その後、何回も会ううちに機密情報まで渡してしまう関係になっていたといいます。
 スパイは日本語が流暢(りゅうちょう)で、日本文化について非常に勉強熱心だったということで「男は金銭目的ではなく人として好きになって結果的に情報を渡してしまったのではないか」と捜査関係者は見ています。

 (2)「あなたの論文は素晴らしいうちに来ないか?」−ビジネス用SNSでヘッドハンティング−
 2018年、論文を称賛する外国人からのメッセージが日系メーカー勤務の男のビジネス用SNSに届きました。
 男は技術的な話で、この外国人とSNS上で意気投合。外国人の地元にも行き、やがて機密情報をやり取りする関係になったということです。
 その後の調べで、この外国人はSNSで実在しない社名をかたり、他の企業にも同様のスパイ活動をしていたことが分かりました。

 (3)「お金払うので一緒に研究しましょう」−日本企業に潜入、共同研究で技術流出−
 日本では、大学などの研究機関が制裁対象となっている国と共同研究を行うことが規制されています。しかし、正面突破できなくても抜け道を見つけ出すのがスパイです。
 制裁対象国の研究者は大学教授に直接、高額な謝礼を払う代わりに日本企業との共同研究の場に立ち会わせてもらっていました。
 表面上は対象国の研究者が関わっていないよう装う手口でした。

 (4)「従業員を守るために技術と資本の交換」−弱点を狙われた半導体関連企業−
 業界トップの品質を誇る日本のある半導体関連会社は経営が厳しくなったところを狙われました。
 元々、付き合いがあった外国の企業から資本提携の話を持ち掛けられた社長は「従業員の生活を守るためにはしかたない」として会社の全株式を外国企業に売却しました。
 新社長に就任したのは半導体関連情報を求めていた国の人物。設計書などの機密情報も吸い取られてしまいます。
 ただ、新社長は日本に帰化していたため、会社が外国の支配下にあることが分かりにくい構図になっていたということです。

 『サイバー空間での情報流出』
「中国人民解放軍関与か、日本の組織への攻撃例200件」
 日本に留学中の中国人学生に対して「国家貢献しろ」などと脅し、サイバー攻撃に使える情報を人民解放軍に提供させていました。
 軍は留学生らを巧みに利用し、一般の人は誰も知らないような日本のソフトウェアの脆弱(ぜいじゃく)性を突き、システムを導入している日本の200余りの企業に攻撃を仕掛けました。
 警視庁公安部はこの事件に関連して中国共産党員で中国国営の大手情報通信会社に勤務していた中国籍のシステムエンジニアの30代の男を書類送検しました。
 被害を受けた企業は情報漏洩はなかったとしています。

 警視庁公安部は「こうした事例は氷山の一角にすぎず、実際に身近で起きている。他人事ではなく自分の周りでも警戒してほしい」と注意を呼び掛けています。

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