残る“木密地域”高層マンションでは独自の取り組みも『首都直下地震』新たな被害想定[2022/05/25 23:30]

東京都は25日、首都直下地震が起きた場合の被害想定を10年ぶりに見直しました。

今回発表されたシナリオでは、死者数は10年前から約3割減の6200人。負傷者・建物の被害も同様に、10年前の3割減になっています。

東京都防災会議地震部会、平田直部会長:「今、東京都の耐震化率92%。それをもっと進めれば、死者の数を8割減らすことができる」

想定される被害が減少したとはいえ、大きな課題はまだ残されています。東京都墨田区京島では、地域の見守り隊が定期的に、高齢者の家を見回っています。理由は、震災時に延焼被害の恐れがある老朽木造住宅が密集する“木密地域”が多く残っているからです。

過去に東京都が作成したCGでは、ひとたび火災が発生すると、木密地域を中心に一気に燃え広がる様子が描かれています。

女性:「子どもたちに、木造で危ないから、ここを売って近くのマンションに越した方がいいとよく言われます。全然その気はありません。ここにいたい。この土地でいたい」

一人暮らしの高齢者も増えるなか、木密地域を完全に整備できないのが現状です。

京一旭町会、槙とし子副会長:「消防車が入ってこられないと思うので、その辺が心配です。補助金など出してもらって、なんとかしなきゃという方向性」

木密地域から少し離れて見えてくるのは、所狭しと並ぶ、高層マンション群です。この10年で、20階建て以上の高層マンションの数は、右肩上がりに増えています。中央区にある39階建てのマンションでは、避難経路や行動計画など、独自の震災活動マニュアルを作成し、災害に備えています。

リガーレ日本橋人形町管理組合、鈴木健一理事長:「高層難民という言葉がいいのか分かりませんが、皆さん個々で備蓄なり備えなり、心構えをしていってほしいと思います」

8年前から32階に住む夫婦を訪ねました。憧れの高層階でしたが、地震の不安は耐えません。

ワテレット・リンゴさん:「(Q.高い所に住んでいて不安だと思うこと)下まで遠いですね。建物が(大きく)揺れるのが一番怖い」

妻・幸恵さん:「その時は震度5くらいあったのかな。とりあえず30分くらいかかって、ここまで(階段で)上がってきました」

エレベーターは、いざ首都直下地震が起きると、最大で2万基以上が停止するとされています。また、今回の被害想定には、高層マンションで、発災から1カ月間で起こり得るシナリオも盛り込まれています。

発災直後は、エレベーターが停止し、地上との往復が困難に。3日後には、家庭内備蓄が枯渇し、時間経過とともに、避難所への避難者が増加。また、電力が復旧しても、エレベーターは点検終了まで使用できず、復旧には時間がかかる可能性も指摘されています。

妻・幸恵さん:「中央区はすごく人口が増えてると思うので、全員分の避難場所が確保できているのか不安はある」

避難者数は、発災4日〜1週間後までで、最大299万人に上るとされています。そうした状況に、手を差し伸べているのは、都内に多くある寺や神社などの宗教施設です。

増上寺は、東日本大震災の時、大量の帰宅困難者を目の当たりにし、急きょ、施設を避難所として開放しました。今では700人が3日間滞在できるだけの準備を整えています。

増上寺総務課、赤羽海衆課長:「(Q.甚大な被害になった場合は、大殿の開放も考えられるか)宗教施設ではあるが、仏様はそんなことで文句を言いませんし、お寺として最大限協力します。大丈夫です」

シナリオでは、1週間後には、高齢者などは病状が悪化したり、衛生環境が悪いと感染症がまん延したりする可能性もあるとしています。さらに、1カ月後には、行政職員やボランティアの疲労が高まり、健康を害する人が発生すると想定されています。

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